ゲーベルの(G線上ではない)アリア
中学の弦楽合奏部でバッハのG線上のアリアを練習しております。
このあまりに有名な「G線上のアリア」でありますが、面白いのは、全然「G線上」ではないということです(笑)。
ウィルヘルミによる、ヴァイオリンとピアノのために編曲されたものは、なぜか「G線」だけで弾く習慣になっておりますが、もちろんバッハはそんなワケの分からないことは想定していません。
というか、オリジナル版では、旋律を弾く1stヴァイオリンは「G線」だけ使わないのです。面白いですよね。ですからホントは「G線上ではないアリア」ということになります(笑)。
ま、それは笑い話として、この曲、バロック音楽としては破格な作りでなんですよね。管弦楽組曲に「アリア(AIR)」が挿入されるのもちょっと珍しいのですが、とにかく各声部がとんでもなく緻密に作られています。和声の複雑さはほとんど現代音楽というか、ジャズというか…。
そんなことを感じさせないキャッチーな全体イメージのおかげで、そのすごさがあまり指摘されないのは、逆にすごいと思います。
特に不協和音の使い方は完全にバロック音楽における「アリア」を超越しています。最後に楽譜を載せますので、逆に協和音の拍を見つけてみてください。実はあまりない。
さてさて、そんな複雑な楽曲であることを知ったのは30年前、大学生の時ですかね。当時も大変な評判(衝撃)だった、ラインハルト・ゲーベル指揮のムジカ・アンティクヮ・ケルンのレコードでした。この演奏は組曲全体を通じて本当にショックを受けました。私の古楽人生に多大な影響を与えた演奏です。
今聴いてもかなり個性的ですよね。各パートの存在感(生命力)が素晴らしく、それぞれがまさに織物のように絡み合って全体像ができあがっているのが分かります。
そんなゲーベルさん、その後もいろいろありましたが、今では指揮者としても活躍しておられます。ベルリン・フィルを振った動画もいくつか観ましたが、実に面白い。
で、比較的最近、彼がブダペスト祝祭管弦楽団を振った管組3番があったので紹介します。
この「アリア」がこれまた衝撃的!2倍速です(笑)。こういう境地になったのか。これはこれで慣れるとありだと思いますが、それこそ不協和音があっさり過ぎ去りすぎてなんだか残念ですね。
しかし、通奏低音のアーティキュレーションは面白いアイデアですね。
先日、最近ジャズバンド部でウッドベースを始めた長女にこのアリアの通奏低音を弾かせて、私がメロディーを奏でました。個人的には、なんとも感慨深い瞬間でありました。そして、「このベースすごい!」と感動する娘に、「だろ?」と得意気になったワタクシでありました(笑)。
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