「みちのくの仏像」展 (東京国立博物館)
昨日、東京で少し時間があったので、上野の国立博物館へ。
朝、ちょっと願かけの必要ができて、どこにお参りしようかなあと思っていたところ、ちょうど日曜美術館で「みちのくの仏像~木に託した人々の祈り~」をやってまして、ああ、宗教というより願かけならやっぱり東北の仏像だな、現地には行けないけれど、ちょうど皆さんで大挙して上野に上京してきているなら、行ってみようということになったのであります。
ウチのカミさんは秋田の山奥の出身。いまだ仏教は純粋な形では伝来していないという秘境であります。
仏教は来ていないけれども、古神道は今でも脈々と生きており、また、どうもキリスト教(ロシア正教?)は伝来した形跡がある…という、まあ都会に育ったワタクシにとっては、信じられないようなところです。
そして、驚くべきは、つい最近まで(というか今でも)、病気になったりすると病院に行くのではなく、お宮に行ったり、あるいは石仏、いや石像を拝んだりするんですね。
そういう話をリアルに聞いていたので、「願かけなら東北の仏像だ」と思ったわけです。
テレビで紹介されたからでしょうか、狭い会場は大変な混雑ぶりでした。
いきなり岩手の天台寺の古仏が並んでいました。あらら、お久しぶり。そう、私、もうずいぶん前になりますが、そうですね、ちょうど瀬戸内寂聴さんが入られたころでしょうか、天台寺にある長慶天皇の陵墓を見に行ったことがあったんです。
そのころは、まだお寺もあまり整備されておらず、平安の古仏と思われる仏像がなんとも大胆に転がされていたりしまして、ちょっと興ざめした覚えがあったんですね(いや、今思えば、それらはそんな古い仏像ではなかったのかもしれませんが…)。
まあ、そんなところも含めて、東北には古いモノがそのままというか、いろいろな事情も含めて残されているんだなと。ある意味、やたらと宝蔵されてきたわけではないので、リアリズムがあるというかなんというか。
そういう意味では、今回おのぼりしていた仏像(神像)たちは、なんとも居心地の悪そうな表情をしておりました。
ものすごくしっかり展示されているのは当たり前、洒落たライトに照らされ、さまざまな解説を加えられている。そして、なにより、都会人にしげしげと観察されている。美術品として。
そう、いつも「仏像展」に行って不思議に思うのは、仏像の前で手を合わせる人がほとんどいないということです。
私は今回は「願かけ」という目的で行きましたし、まあなんちゃって僧形ですので、一人脱帽合掌して坊主頭を垂れていても、ある意味変ではなかったのかもしれませんが、皆さんはどうなんでしょうね。
素晴らしい仏像や神像に出会うと、私は自然と手を合わせないではいられない。修学旅行でももちろんそうでした。私の影響で生徒もちゃんと合掌礼拝してましたっけ。
博物館、美術館での宗教的展示というのは難しいですね。宗教画は別として、もともと拝む対象のものに対しては、やはりちゃんと「拝む」ことが必要なのではないでしょうか。
ちゃんと拝んでから、凝視したいところですが、皆さんはいかがお思いでしょうか。
ま、キリスト教をちゃんと理解せず、祈る気持ちもないままバッハのカンタータなんかを演奏しているワタクシに言われたくないですよね(苦笑)。
それはいいとして、今回の展示の中で、特に私の「拝む」気持ちを喚起したのは、秋田の小沼神社の謎多き二体の像でした。いちおう仏像のなりをしておりましたが、感じられる空気はもっと古い信仰のエネルギーでしたね。なにしろ神社蔵ですし。
それから青森の恵光院の女神像。こちらはお寺の神像。コノハナサクヤヒメを思わせる何かを発していました。
いずれも京都や奈良や、あるいは山梨などの仏像のような洗練された感じはなく、より自然体というか、人間らしさを感じさせるお姿でありました。
そういう意味では、やはり彼ら彼女ら、あの東北の空気の中で、じっくり拝ませていただきたいと思いましたね。
なにより、みんな大集合させられて、お互いに向かい合ったりして、なんとも居心地悪そうにしていらしたのが気になりました。いや、それもまた、上野のお上りさんの相部屋状態で面白かったかも。
それから、震災と文化財の関係についてもいろいろ考えさせられました…貞観期に作られたと思われるあの仏さまは、二度大地震大津波を体験なさったのですね。やはり東北の神仏はたくましいなあとも感じるのでありました。
ぜひ皆さんもどうぞ。そして、次は東北に行きましょう。
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