『日本的霊性』 鈴木大拙 (岩波文庫)
お正月はくだらない番組もあって、それはそれで良かったのですが、NHKさんを中心になかなか見応えのある番組もいくつかありました。
今年、特に面白かったのは、Eテレで2日に放送した「100分 de 名著」新春SP企画の「100分 de 日本人論」でした。
松岡正剛さんが九鬼周造の「『いき』の構造」を、赤坂真理さんが折口信夫の「死者の書」を、斎藤環さんが河合隼雄の「中空構造日本の深層」を、中沢新一さんが鈴木大拙の「日本的霊性」を紹介、解説しながら、MCの伊集院光さん、武内陶子さんを交えて「日本人論」を展開する番組でした。
「あいまい」「死者」「うつほ(中空)」「無分別智」…全体として、私もこのブログでずっと言い続けてきたことと似た内容になっていましたね。すなわち、言語以前(未分節、未分化)の「モノ」が無意識のもとで非常に重要な役割を果たしているということですね。
今年こそは「モノ・コト・トキ」論で1冊本を書こうと決意しているわけですが、おかげでだいぶ自信がつきました。なんとなくぼんやりしていたモノがはっきりしたコトになりました。これで言語化できる(笑)。
実は昨年の秋から、鈴木大拙の「日本的霊性」をお風呂で(!)読みなおしていたところでした。湯船につかりながら、眠い目をこすりこすり「日本的霊性」を読む。これがまたなんともヲツなのであります。
もともと岩波文庫はウスウスの紙ですので、どんどん湯気を吸ってブヨブヨになっていく。油断すると眠りこけて湯船に落としそうになる(笑)。
そんなんで理解できるような内容ではないのですが、まあ、禅なんて実はそんな半分無意識下での認識の問題なので(と勝手に思っている)、案外いいんですよ。修行している方には怒られちゃいそうですが。
この番組で、中沢新一さんがうまくまとめてくれてましたね。鎌倉時代になって、私たちは「日本的霊性」を自覚したと。発見したと。
その特徴は、「大地性」「莫妄想」「無分別智」。禅や浄土信仰は、言語を捨てる、削ぎ落とすところにその本質がありますから、おそらくは、そうした特徴として挙げた言語もまた、自覚、意識化したのちに、再び無意識化されるべきなのでしょうね。
私の言うところの「コトを窮めてモノに至る」というやつです。
中沢さんも言っていましたが、鈴木大拙は英訳の天才でしたよね。彼が日本的霊性について英語で書いたものは、のちにアメリカのビートニクに多大な影響を与え、それがまた日本に逆輸入されて「日本的無意識的サブカルチャー」の誕生を促すという、まさに「モノ→コト→モノ」というダイナミクスを実現したわけです。面白いですよね。
そんなふうな意味でも、この本は書斎でまじめな顔して読むのではなく、湯船で裸で眠気と闘いながら読むのがふさわしいのです(ホンマか?)。
実は私は若い時にこの本をまじめな顔して読んだのですが、それこそホントに眠くなってしまって、全く身にならなかった。ところが、今は妙に腑に落ちるんですよ。やっぱり頭で考えるだけでなく、裸で一体化しなきゃダメなんでしょうか。コトよりモノ。
ぜひ、皆さまも、お風呂に常備してみてください(笑)。
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