追悼 菅原文太さん
高倉健さんに続き、また昭和を代表する役者さんがこの世を去ってしまいました。
時が移り、過去の不在にさらされるのは世の常とはいえ、寂しいかぎりです。
まあ考えてみれば、高倉さんにせよ、菅原さんにせよ、私にとっては少年時代の思い出の一つであり、その少年さえもすでに半世紀を生きてしまったわけですから、しかたないと言えばしかたない。
菅原さんは震災、原発事故を契機に、俳優業を引退し山梨で農業にいそしんでいました。知り合いが農業を通じて菅原さんと知り合いだったりして、ひそかに身近に感じていたものです。
菅原さんは「いのちの党」という非政治団体を立ち上げ、どちらかというと左寄りな主張をされていました。
不在になってゆく「昭和の男」たちに共通しているのは、戦争を体験しているということでしょう。そして、その結果、当然の帰着の一つの可能性として、平和に対する強い願いが戦後世代よりも強くなる。
ある意味、菅原さんの無農薬有機農法や脱原発へのこだわりは、分かりやすいその例であるとも言えます。
昭和の高度経済成長を支えた土建、運輸から、農業を支える立場へ。トラック野郎から、軽トラ野郎に転身したのもまた象徴的でありました。
安倍政権下の日本における右傾化を憂える発言も多々ありました(たとえばこちら)。戦後生まれ宰相に対する、体験者としての本能的な憂慮でありましょう。
そう、近い将来、戦争体験者がゼロになる日が来るんですよね。生きているうちにその日を体験することになると思います。
検証、継承されるべき近過去が見えてこない…それは、昭和が右と左に分断し、互いに頭の中での言葉に拘泥してきたからです。
そのうちに、言葉を超えた体験的本能、すなわちコトに優越するモノが不在になっていく。その事実に恐ろしさを覚えます。寂しいかぎりですと書いた裏側にはそうした恐ろしさが常にあるのです。
はっきり言って、これからはそういう体験的左翼が減っていくことでしょう。それはやはり寂しいことであるとともに恐ろしいことですね。
毎日子どもと接している、戦後生まれの一教員として、何をどう検証し、継承していけばよいのか。正直苦悩ですね。
昭和は遠くなりにけり…遠くなるのは当たり前。単なる慨嘆ではなく、だからこそ何をすべきなのか…菅原さんの死に、ふと不安になってしまったのでした。
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