俳優(わざをき)=物真似(ものまね)
春先に見逃したSWITCHインタビュー達人達「コロッケ×山寺宏一」のアンコール放送を観ました。
声優とものまね、似ているようで違う職業。しかし、ともに超一流どうしの話となると、どの分野でもそうですが、共通点の方が際立ってくるんですよね。
逆に言うと、二流以下どうしは噛み合わないどころか、敵対しあう。お互いの世界を受け入れられない。自分の優位を主張しだしたりする。
もちろん、山寺さんもコロッケさんもそんなことありません。お互いに尊敬しあっている様子がよく見て取れましたね。
お二人の最終結論は、「自我を捨てる」ではなかったでしょうか。「謙虚だけれどプラス思考」という言葉が良かったですねえ。分かります。超一流はみんな「謙虚」。しかし、前向きなプラス思考。
先日、あるところで渡辺謙さんとお会いしたんですが、まあ驚くほどに腰が低く、誰彼なく周囲に対して丁寧すぎるほどの気遣いをされていました。ああ、なるほど、こういう人でないと世界的な俳優さんにはなれないんだなと。
また、数日前、学校に俳優座の俳優さんをお招きして、生徒に演技指導などをしてもらいました。そこでも全く
同じ話になりましてね、結果、芸能界もなかなか捨てもんじゃないと。なるほど、いい人が残っていく世界という意味では、他の業界よりもシビアかもしれませんね。
その俳優さんが、「俳優と声優は180度違うことをしている」とおっしゃっていました。たしかに技術的にはそういうことが言えるでしょうね。ただ仕事の根本としては同じでしょう。そして、ものまねも。
ここで、私の「ものまね論」を思い出してみましょう。こちらの記事に書いたものです。
昨日の記事にも書いたように、「もの」という日本語は本来「他者(性)」を表す言葉です。それを自分に「招く」のが「ものまね」。世阿弥の言う「物学(ものまね)」もそういう意味と解しています。
ここでもう一つ面白い気づきがあるんです。そう、これも私の専門分野である「萌え=をかし論」で紹介したように、「をかし」という形容詞の語源は「まねく」という意味の「招(を)く」であると考えられます。
皆さんは「俳優」をなんと読みますか?当然「はいゆう」ですよね。しかし、それは漢語。和語ではなんと訓じていたかといいますと、「わざおぎ」です。歴史的仮名遣いですと「わざをぎ」。さらに古くは「わざをき」と濁らなかったことが分かっています。
もうお分かりと思いますが、これは「わざ+招き」なんですね。ワザを招く人だということです。「わざ」という言葉については書き出すと長くなるので、手短かにまとめますが、これは「誰かの意図的な行為」ということです。
この「わざ」、「しわざ」や「わざわい」から想像できるように、悪い意味で使われる、すなわち自分の意図に反するという意味において、もともとは他者性の高い言葉です。
すなわち、「もの」と「わざ」とは他者性(非自己性)という点においては、非常に近いイメージを持った語なのです。
そして、「まね(真似)」も「招く」が語源で、「をき」も「招き」だとするならば、そう「俳優(わざをき)=物真似(ものまね)」ということになりますね。
今日、山寺さんとコロッケさんのお話を聴いていて、なるほどやっぱりそうなんだと思った次第です。ある種の「憑依」ということですね。「媒体(メディア)」ということです。あるいは「つなぐ」という本来の意味での「エンターテインメント」。
そして、ともにもとは「神事」であったということ。山寺さんにしてもコロッケさんにしても、たしかに世界に平和と幸福を与えているじゃないですか。
まさに神の領域ですね。尊敬します。私も早く自我を捨てなければ。そして「器(うつわ=空っぽな丸)」になって他者を受け入れたいと思います。
期せずして「禅」と全く同じになるところでまた世阿弥ともつながるという…うん、深いがシンプルな真理ですなあ。
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