『山口組概論―最強組織はなぜ成立したのか』 猪野健治 (ちくま新書)
宗教家出口王仁三郎は「宗教がなくなる世」を理想としました。
山口組三代目田岡一雄は「暴力団がなくなる世」を理想としました。
私は、宗教界も暴力団も好きではありませんが、なぜかこの二人には強く惹かれてきました。
二人の共通点は、弱者への愛に満ちていることでしょう。自身も貧しく被差別的な生活を強いられてきた中で、その愛は育ちました。
田岡組長の愛を最も感じることができるのが、この本にも何回か引用されている「『お父さんの石けん箱−愛される事を忘れている人へ。』ですね。娘さんが父田岡一雄に書いた作品です。
上記の記事にも私は「田岡さんはみろくの世を目指したのかもしれない」と書いていますね。その他、いろいろと熱く語っているワタクシですが、今でもその気持ちは変わっていません。ぜひ皆さんにもお読みいただきたい。
さて、三代目亡き後、世の中は「みろくの世」に近づいたのでしょうか。残念ながらそうとは言い難いですよね。
この本に書かれているように、ますます「暴力団」への圧力は強まり、結果として山口組が「最強組織」になりつつあります。ある意味皮肉なことです。
そして、抗争禁止、薬物禁止、不良外国人とのつきあい禁止など、いわゆる暴力団らしさを消していく方向に変化してきています。それは田岡さんの考えにも一致しています。
つまり、山口組自体は、外圧によって、一面においては田岡さんの理想に近づきつつあるということです。
山口組が最大最強の組織として、そういう方に向かうということは、他の組もまた同様の選択を迫られているということになります。
ということは、まさに非暴力の平和な世の中に向かっているのかというと、先ほども言ったように決してそのようには思えない。
ここが問題。私のよく言う「荒魂」の大切さと難しさです。
皆さんもよくご存知のとおり、やくざ組織の弱体化によって、今度は半グレや不良外国人、あるいは海外マフィアの力が増してしまっています。
同じ荒っぽさでも、日本古来の「荒魂」を継承し(形の上だけでも)「任侠」を標榜してきた日本のやくざと、ただカネ目的の外来種とは大違い。
極論すれば、どちらか残っていただくとすれば、さあどちらにしますかという問題なのです。
半世紀前の東京オリンピックにおいて、実は「やくざ」の活躍はすさまじいものがありました。彼らは陰に日なたに「日本のため」に「荒魂」を発動させました。
それからしばらくの経済成長や、安心安全な国の確立にも、彼らは大きな役割を果たしたと言えます。
ものすごく分かりやすい例だけ申しますと、「防波堤」の役割をしたと。外国から「日本にはヤクザがいるから、そう簡単には踏み込めない」という認識(ある種の神話)を形成してくれたのですね。
実はだからこそ私たち庶民は半鎖国状態の中でぬくぬくと生活できたのです。
それが、そう、おそらくはアメリカからの圧力でしょうかね。暴対法などが整備され、どんどん彼らが弱体化してしまった。その結果は考えずとも分かるというものです。現状そのものですね。
さあ、そうしてみますと、ワタクシ個人の願いとしてはですね、6年後の東京五輪において、再び彼らの力を借りたいわけです。
何を言っているのだ!とお叱りを受けるでしょうか。しかし、もともと祭における「やくざ」の役割というのは、ほとんど御神業に近いものがあります。いや、近いではなく、そのものでした。
まさに国を挙げての国際的祭祀であるオリンピックには、彼らの力、魂が必要でありましょう。
もちろん、昔のように戻ることは不可能です。しかし、ある意味で(期せずして)三代目の理想に近づいた今の山口組には、50年前よりもさらに高次元な「荒魂」を発動していただきたい。
こんなことを思うのは私だけでしょうか。いや、そうでもないようですよ。その話はまたいつかします。
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