『洗脳 地獄の12年からの生還』 Toshl (講談社)
今日、横浜アリーナでX JAPANの4年ぶりの国内単独ライブが行われました。すさまじい盛り上がりだったそうです。
私、実はX時代の初めての東京ドーム公演に行ってるんです。1990年でしょうか。私もまだ26歳になったばかりでした(笑)。大昔のような気がします。
その後のXの激動については語るまでもありません。その激動の末の今日の単独ライヴですから、それは本人たちはもとより、ファンの方々、また天国のHIDEさんも感慨深いものがあったことでしょう。
その激動の中心にいたのはヴォーカルのToshlさんでした。私たちの知らなかった、そのまさに激動の内容が白日のもとにさらされたのは、つい最近のことです。
私もこの本を読んでみましたが、正直、今まで読んだノンフィクション系の本の中で、最も衝撃的でしたし、ある意味勉強になったと言っていいでしょう。全く他人事という感じがしませんでした。個人的にどうとかではなく、弱さや強さ、あるいは愛や憎しみ、善悪といった人間の本質を抉りだすような真実味というか迫力というようなものを感じて戦慄しました。
「洗脳」…自分は関係ないだろうと思いがちなこの言葉。しかし実際には、Toshlさんが語るように、誰でもそこにはまる可能性がある。
そう、私たちの日常には、「洗脳される」だけでなく「洗脳する」可能性も存在しているのです。被害者にもなれば加害者にもなる。
私なんかよく「先生に洗脳された」と笑いながら言われますし、それに対してちょっと気分がよくなったりします。たしかに教育とはある部分「洗脳」であるべきですし、「洗脳」できる先生は実力のある先生だと言われがちです。
そこに潜む危険性については現場ではあまり議論されませんね。たしかに周りの先生たちを見ても、優れた結果を出している先生は、ある種の洗脳術を持っています。
それが、純粋に相手(生徒)のためのものであればいいのかもしれませんが、場合によっては先生自身の自己実現のためという場合もあるかもしれません。それは悪しき「洗脳」なのかもしれない。
人は、人の心を動かし行動させているという自覚があると気持ちよくなるものです。私が気分よくなったのもそれでしょう。そして、それは「自己洗脳」とも言える状態です。これは危険だなと今回この本を読んで気づかされました。
Toshlさんの場合、名声とお金という悪魔がそこに関わってきていたので、「洗脳」のスケールも浮世離れしたものになってしまいました。しかし、私たち一般人もスケールこそ違えど本質的には同じようなことを起こしながら生きているのではないでしょうか。
今、私はとにかくこの本を多くの方に読んでいただきたい。なんでそんなことが起きるのか、自分には関係ないと思った方にこそ読んでいただきたい。読んでいただければ、私たち自身の中に、「洗脳する」側と「洗脳される」側の両方が必ず存在することに気づくでしょう。
そして、それに気づくことによって、明日からの生き方が変わってくると思います。私はずいぶん変わりましたよ。
皆さんもなんとなくお気づきのとおり、私は特にそういう危険性のある環境の中で生きていると思います。教育、宗教、政治、哲学、セミナー(研修)などに深く関わることが多いからです。そこを再確認させられました。そして、いろいろと反省したり対策を立てたりしました。
今の私はまず「お金」には全く執着しないようにしています。カネは悪魔です。いや、悪魔の食べ物です。悪魔につけいられないようにするには、まず無駄にお金を持たないことです。まあ、幸いなことにウチには本当にお金がないのですが(苦笑)。
先日、Toshlさんの生の歌声を聴く機会がありました。四半世紀前と同じ伸びやかな高音に魅せられるとともに、そこに「洗脳」と「脱洗脳」を経てきた深み、重みを感じることができました。本当に代償が大きすぎたと思いますが、それさえももしかするとToshlさんには必要なことだったのかとも思いました。
神はその試練に耐えうるものにのみ試練を与える。きっと、Toshlさんには壮大な天命があるのでしょう。応援していきたいと思います。
先日行われたToshlさんの赤裸々な記者会見の動画を貼っておきます。ご覧ください。
Amazon 洗脳 地獄の12年からの生還
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