『江戸しぐさの正体–教育をむしばむ偽りの伝統』 原田実 (星海社新書)
期せずして昨日の記事の続きとなります。
ニセ科学ならぬニセ歴史。まあ歴史学も社会科学ですから、ニセ「科学」と言ってもよいでしょう。
そしてTOSS批判。さらにはワタクシに対する批判の書ともなりそうです(笑)。
著者の原田さんとはお会いしたことはありませんが、私にとっては非常に大切な人物です。
先日お会いした八幡書店の社主武田崇元さんのもとで働き、ある意味私のように古史古伝の世界に惹かれていた原田さんは、ある時から全く逆の立場に立つことになりました。
そのいきさつについてはここでは詳しく書きません。まあ捏造の現場を見てしまったのでしょうね。
というわけで、現在の原田さんは、私がつきあっている宮下文書や出口王仁三郎の世界については、表面的には完全なるアンチです。
とは言え、と学会の皆さんによく見られるように、皆さん、その対象にある種の愛情を持っているんですよね。屈折した愛情(笑)。たいがいアンチというのは、そういうものです。嫉妬の構造と似ている。
で、原田さん、今度はまた面白いところに目をつけましたね。「江戸しぐさ」。
実は私も「アヤシいな」と思っていたところでしたので、この本を読んだ時には、本当に「我が意を得たり」「よくぞ言ってくれた」「さすが原田さん」と思いました。
ただ、宮下文書を地元の現実の中で「感じている」私としてはですね、そういう捏造された歴史もまた「真実」であるとも思うのであります。
それは「全ての歴史は捏造されている」とか「勝者の歴史・敗者の歴史」といったようなレベルの話ではなく、いやそういうレベルでの話ですが、もっと卑近というか、生活に根ざしているというか、「嘘」をつかざるをえない状況こそが、その人物にとっては「真実」であり「歴史」であるということです。
結局そうなると「歴史的事実」よりも「人物的事実」、すなわちその人がどんな人生を歩んだのか、特にどんな苦しみを味わって「嘘」をつかなければならなくなったのかの方が気になってきます。
原田さんらも、当然そこのところへの予感を持っていると思いますが、あえてそこまで踏み込まないで、「批判」という態度をとるところにとどまっています。
その予感というのは、ある種のトラジディーへの悪い予感でもあるわけですね。ものすごく簡単に言ってしまうと「注目されたい」「主人公になりたい」「尊敬されたい」…すなわち「愛に飢えている」状況に至らしめた、ある種のコンプレックスであったりスティグマであったりを白日のもとにさらさなければならなくなる。それはその対象本人にとっては、最も隠蔽したいことであったはず…。
というわけで原田さん、この「江戸しぐさ」の発案者についても、そこまでは踏み込んでいません。ただ、犯人としてのスティグマをあらためて貼るくらいのところでやめていますね。
おそらくはそこに、私の向山洋一に対する私怨のようなものはないからでしょう。つまり、他人だからです(深い関わりのあった武田崇元さんには私怨ありかな…苦笑)。
昨日の左巻さんも同様の姿勢だなと感じました。批判、攻撃はしたいけれども、いい人ではいたい…なんて言うと失礼でしょうか。
私も基本そういう人間です。人に批判されたり、嫌われたりするのはいやですからね。
それにしても、「江戸しぐさ」とはまた、面白いものを作り上げましたね。感心です。そして、それを受け入れるだけの腐敗が現実にはあると。昨日の水の話もそうです。そういう世の中の間違いに敏感な人たちが「嘘つき」になるのかもしれません。
それにしても、学校のセンセーというのは騙されやすい人種ですね(苦笑)。それだけ「世間知らず」なのでしょう。
ちょっと複雑な気持ちになった昨日、今日でありました。
Amazon 江戸しぐさの正体
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コメント
以前某勤務先で、江戸しぐさを生徒に読ませる、という取り組みがありました。また、外部講師を呼んでフラワーアレンジメント教室をしたら、「水の結晶」の話をされ、花を生けた容器に「ありがとう」「大好き」などと書くことに。一部から「なんでこんな胡散臭いことやるの?!」と怒りの声が……。面白かったです、いろいろな意味で。
比較的ご近所のお話ですが、昔のことなので書いてしまいます(^_^;)
投稿: A.I | 2014.10.21 00:58