青色LEDの未来は…
青色LEDの開発に貢献した赤崎さん、天野さん、中村さんの3名のノーベル物理学賞受賞のニュースが飛び込んできました。
世界に与えた良きインパクトを考えれば当然の受賞とも言えましょうが、いわゆる「発明」が物理学賞を獲るというのは、ちょっと意外な感じもしますね。
いずれにせよ、日本の技術力や研究力を示す良い機会となり嬉しいかぎりです。
しかし一方で、中村さんが古巣の日亜との間に繰り広げた争い、そしてその結末としてのアメリカ移住を考えると、単純に喜んでばかりはいられません。
中村さん自身もおっしゃっていましたが、これは単純に日米の文化的相違です。特に教育環境の違いは大きい。
日本は、みんなが平均的な力をつけ、集団で何かをやり遂げることを目指す教育をしている。アメリカは、個性を伸ばし、各自が能力のある分野で一人でなんでもやってしまうことを目指す教育をしている。中村さんはインタビューでそう答えていました。
たしかにそういう傾向はありますね。そして、中村さんの言うとおり、一概にどちらがいいというわけではない。
ただ中村さんのような個性を持ってると、たしかに日本では生きにくいかもしれない。しかし、青色LEDを日本の会社にいる時に開発したことは事実であって、これが自由な研究開発の場であったらはたして成し得たことなのかは微妙です。
ある意味、抑圧され、恵まれない環境の中だったからこそ成し得た、いや意図を超えて起こった奇跡とも言えましょう。開発というより発明、発明というより発見。
ちなみに今日は、この朗報の前に、早稲田大学が小保方さんの学位を取り消すというニュースが流れました。これもまた、日本的集団の中で起きた事件でしたね。なんとも象徴的な日となりました。
さて、私たちの生活になくてはならなくなった青色LED。身近なところにも随所で使われていますが、私として期待しているのは農業分野への活用です。
意外に思われるかもしれませんが、私は農業の工業化に大賛成の立場です。5月に「農業の工業化」という記事を書いていますね。あの時お話をした方は、まさにLEDの開発製造をしている会社の社長さんでした。
皆さんご存知のとおり、青色LEDが発明(発見とも言える)されたおかげで、光の三原色がようやく揃い、その結果、たとえば白色LEDの製造が可能になりました。つまり、三原色の配合具合によって、いろいろな波長の光を作り出すことが可能になったわけです。
植物の光合成と言えば太陽光というイメージがあると思います。当然です。しかし、実は植物というのは、それぞれの種によって得意とする波長が違っていたり、それぞれがいろいろな波長に対して特殊な反応をしたり、個性があるんです。
それをうまく調整してやると、味や大きさや収量や成長スピードを変えることができます。安全性を高めることもできるし、保存期間を伸ばすこともできる。
太陽光線は非常に多くの波長の光を含んでいます。その一部を人工的に作って、選択的に使うことは、それほど自然の原理からは外れていないと私は思います。
なんでも原始的自然が良いという考えもまあ理解できなくはありませんが、科学的な産物さえも原始的自然の領域を出ることはありえないという意味では、大きな自然という範疇に収まると考えてもいいのではないでしょうか。
広く科学という分野は、ほとんど偶然的に確率論的に我々に与えられた「自然の一部」を拡張して理想的な自然を目指すという、本能的な営みと言ってもいいのかもしれません。
とにかく青色LEDに関わったお三人に祝意と敬意を表したいと思います。これからのマーケティングの方向性においても、日本が世界をリードしていってほしいと心から願います。
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