『1964から2020へ オリンピックをデザインした男たち』 (NHK BS1)
1964東京オリンピック開会式から50年。素晴らしい番組を観ることができました。
う〜ん、なんだか涙が出てしまった。見逃さなくて良かった。
今日夕方、絵本作家の仁科幸子さんからお電話をいただき、番組のあることを知りました。
仁科さんは、この番組にもご登場になった永井一正さんのお弟子さんというか、お仕事仲間でいらっしゃいます。
永井さんはこのたび2020東京五輪のシンボルマークの審査委員となられました。そして、今日のこの番組で紹介されていたとおり、半世紀前の東京五輪の際にはコンペに出品されていました。私はその作品を今日初めて見ました。折り紙と聖火トーチ…なるほどと思わせる斬新かつ普遍的なデザイン。
しかし、その素晴らしい永井さんのデザインを、ある意味軽く凌駕してしまったのが、この亀倉雄策さんのあまりに強力なデザインでした。
勝見勝さんと亀倉さんを中心とする「デザイン室」の仕事があれほど多岐にわたっていたとは…驚きでした。それを若い力で見事に乗り切ったのですね。横尾忠則さん、田中一光さんなどなど…2020年のオリンピックもまた、若い力の「爆発」が見られることでしょうね。
亀倉さんが衝撃を受けたというカッサンドルの「強盗」の話も出てきました。以前私が永井一正 ポスター・ライフ 1957-2014に紹介した話です。そして、世界に追いつこうとした亀倉さんが到達した「日本的なるもの」。感動的でしたね。
私もたまたま亀倉さんについて書いた記事に「国際的なイベントであるオリンピックにおいては、その開催国らしさ、すなわち『日本らしさ』とともに、それぞれの参加国らしさ、さらには全てを抱合したある種の『地球らしさ』をも要求されます」と書きました。
次なる東京五輪において、永井さんを中心とする日本のデザイナーの皆さんが、はたしてそれをどういう形で実現してくれるのか、非常に楽しみであります。
そして、それは必ずや実現し、その瞬間、再び世界に大きな衝撃を与え、新たな文化の形が示されるにちがいありません。
「日本的なるもの」が「地球的なるもの」と同義になる…こんなことを言うと、自国中心主義的にとらえられてしまうかもしれませんが、もともと「日本的なるもの」は「地球的なるもの」であったと信じる私としては、ようやく本来の姿に戻るということであると考えているのでした。
ピクトグラム…これもまた、非常に日本的であり、かつグローバルな発明でした。再発見とでも言いましょうか。
日本は「言霊」の国と称され、まるで「ことば」に特別な力を認めているように解釈されていますが、これは実は大きな間違いです。
日本語学的な見地に基づく、私の「モノ・コト論」においては、言語に限らず人間の脳内でイメージ化、記号化されたものは全て「コト」です。
ですから、「コトタマ」には「事霊」という漢字が当てられることの方が多かったのです。江戸の国学者の言葉に騙されてはいけません。
そうしますと、実は「言語」「地域」「時代」を超えたピクトグラムこそが、本来の「コトタマ(表象のエネルギー)」を持ったものであることが分かりますよね。
実際、日本発の世界的(地球的)文化となって定着し、あるいは変化成長しているわけですから。
おそらくは、6年後の五輪においては、ピクトグラムを超えた「コト」が発明されると予感しています。マルチメディアの時代、日本ならではの自由な発想で、それは実現するでありましょう。それも非常に楽しみです。
デザインとは「未来を描く」ものです。人々の心に未来へのモチベーションを喚起するのがデザインの力です。すなわち命のあり方を最もシンプルに見せるのがデザインのあるべき姿なのです。
永井一正さんという、それを世界で最もよく理解しておられる方が2020年に向けて、デザインの中心人物になられたことは本当に喜ばしいことです。
先ほども紹介したこちらの記事には、半世紀前のデザイン室の素晴らしいお仕事の一部を紹介してあります。私は生まれてまだ3ヶ月くらい。私の父が大切に残しておいてくれた当時のホンモノたちです。
父の思いもまた、デザインという命の力に乗って、50年後こうして私に継承されているのかもしれませんね。
涙、涙です。私も微力ながら6年後へ向けて頑張ります。
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