『世界遺産にされて富士山は泣いている』 野口健 (PHP新書)
今日はローリング・ストーンズの専属カメラマン、有賀幹夫さんが遊びにいらっしゃいました。ストーンズはもちろん、ポール・マッカートニー、日本では忌野清志郎さんや吉井和哉さんを撮り続けてきたスーパー・フォトグラファーさんです。
音楽の話ももちろんしましたけれども、全然違う話でも盛り上がりました。とは言え、やはりロケーションの影響か、富士山の関わる話がほとんどだったような気がしますね。
世界文化遺産になった、その要因は自然というよりも「芸術」と「信仰」ですからね。アーティストにとって富士山は常に最高のロケーションであり、素材であって当然です。
ロックと富士山というのも、実は非常に深い関係があると思います。有賀さんともその点では意見が一致しました。考えてみれば、志村正彦くんはもちろん、 吉井和哉さんも、また藤巻亮太くんも富士山に深く関わっていますよね。
有賀さんの素晴らしい構想もあります。きっとロックの分野でも重要な動きがあることでしょう。楽しみです。
世界遺産となって、さらにそのような存在感を増している富士山ですが、一方で多くの問題を抱えているのも事実です。正直、世界遺産登録取り消しの可能性がけっこう高い。
そのへんのことをガツンと書いてくれているのが、この野口さんの本です。
野口さんは、登山家であり、また自然保護活動家であるのは周知のこととして、最近では藤巻亮太さんとのコラボレーションでメディアに登場することも多いですね。
そうそう、来月にも富士吉田のふじさんホールで二人はイベントを催します。私もなんとか時間を調整して参加しようと思っています。
また、その後も別のイベントで野口さんとお会いする機会がありそうです。
私は富士山の別荘地に住んでいるという意味においては、ある意味では世界遺産に傷をつける、あるいは汚す存在であるとも言えます。
だからこそ、富士山の多様な価値や魅力を発信しているつもりですけれども、どこか自己矛盾を感じているのもまた事実であります。
私が妄想している富士山を世界に開くという事業も、観光や開発をどうしても伴うものです。そこをどうすり合わせていくか、これは本当に難しい問題ですね。
特に地元の「生活」というローカルな部分と、たとえば仲小路彰が考えたグローバルな富士山とは、どうしても噛み合わないところがある。理想論だけでは絶対に解決しない。
私はもう長いこと富士山麓に住んでいますが、それでもよそ者であることには変わりありません。そんなよそ者が勝手に「富士山、富士山」と言っていることに、正直苦々しい思いをされている方もいるようです。
新たに外からやってくる方には、「地元を大切に」というアドバイスをしていますが、それもまたずうずうしい言葉だとも言えますね。
しかし、そういう矛盾を乗り越えなければ、本当の富士山の価値は表現できないとも思っています。
その点、この本で示されている野口さんの具体案は、さすがバランスがいいと感じますね。地元のことも最大限考えた上での改革案。
自然保護を訴える方々の中には、感情論というか、情緒的な論調になってしまう方も見受けられますが、野口さんはちょっと違う。プロ意識が高いのでしょう。同じよそ者として(!)学ぶべき点がたくさんありました。
今のまま行ったら、本当に取り消しの憂き目に合いそうな富士山。それはそれでいいのか。いや、今こそ我々(よそ者含めた)地元民の意識改革と行動力が試されているのではないでしょうか。
特に教育は大切だなあ。あまりに生活の一部になってしまっていて、感動もありがたみも尊崇の念も忘れてしまいがちな子どもたちにとって。
というわけで、この本を読み、これからもますます「深い」活動をしていかねばならないと感じたのでありました。
Amazon 世界遺産にされて富士山は泣いている
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