原爆と理研と天皇と仲小路彰と
6日の広島に続き、明日は長崎の原爆忌です。
大東亜戦争自体の意義や、被爆の意味については、それぞれの解釈があるに違いありません。一昨日「「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」の意味」に書いたごとく、そういう解釈(言葉)にこだわっていると、実はそこに衝突が生まれ、結果として、避けなければならないはずの悲劇が繰り返されてしまう。
今日は重要なお客様が来られ、世界平和についていろいろとお話をさせていただいたのですが、非常に珍しく、私よりも先に先方から仲小路彰の名が語られました(初めてかもしれない)。
そう、仲小路彰は世界史上の戦争についてほとんど完璧に知り尽くしている人物でした。彼の書物を読むと、まさにそれは総合的、統合的な「戦争学」であって、私(わたくし)の視点による解釈ではなく、ある種、人類の業、性質のようなモノを浮かび上がらせています。
そして、それに基づいて未来的な平和を志向する。理念的というよりは実に具体的に平和を引き寄せる方法を語っているように思われます。
大いに学びたいところですね。
さて、広島原爆忌の前日には、例の小保方STAP問題に絡んで、日本を代表する優秀な科学者笹井さんが亡くなってしまいました。大げさでなく人類の損失であると思います。
その点、生涯独身を貫き余計な人を寄せつけず仙人のような生活をしながら研究を続けた仲小路彰は、やはり正しく賢い選択をしたのかもしれませんね。組織のしがらみや、無駄な人間関係(女性問題も含む)を断つことが、真理の追究に重要な環境を与えることを知っていたのでしょう。
ところで、笹井さんや小保方さんの所属している理化学研究所が、戦前戦中、原子爆弾の研究・開発をしていたという事実は案外知られていませんね。
日本では昭和13年にはウランの採掘が始まり、15年には原子爆弾の基礎となる研究が始まっています。中心になったのは理研の仁科芳雄。彼の名前の頭文字をとって「ニ号研究」と呼ばれていました。
「ニ号研究」は陸軍。海軍は「F号研究」。かの湯川秀樹も研究に参加していました。
日本軍による原爆開発は、結局「間に合わなかった」。いや、それ以前に、昭和天皇によって研究自体が阻止されたとも言えます。
仁科は昭和天皇に新型爆弾の説明をしています。それを聞いた陛下は、その新兵器が世界を破壊してしまう可能性のあるものであると感じ、のちに軍部の意気高揚に水を差すかのごとく「やめた方がよい」とおっしゃったと言います。
結果として、日本は世界で初めて原爆を使った国ではなく、世界で初めて原爆を落とされた国として、歴史に名を残すことになりました。
はたしてどちらが不幸であったのか…。
さらに昭和天皇は終戦の詔勅(玉音放送)で原爆について明確な批判の言葉を残しています。
「敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル而モ尚交戰ヲ繼續セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ朕カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ」
原爆の恐ろしさを知っていたからこその言葉でしょう。加えて、原爆のさらなる使用によって、日本のみならず世界が滅ぶ可能性があるから、ここで戦争を終結させると述べています。
よく、原爆が日本人の戦意を削いだというようなことを言う人がいますし、アメリカなどは、それを「戦争を終わらせるために原爆を使用した」と言い換えて、原爆使用を肯定するような発言をしてきました。
しかし実際には、原爆を投下された多くの日本人たちは、逆に戦意を高揚させていったのです。それを一気に終戦に向かわせてたのは天皇陛下の御聖断があったからこそであると、かの仲小路彰も指摘しています。なるほど…ですね。
仲小路彰は、米国による原爆投下によって、戦争が戦争ではなく単なる「殺し合い」になってしまったと書いています。たしかにその通りですね。そこにはルールも目的もない。だからこそ陛下は御聖断を下したと。
そう考えると、昭和天皇の次の発言には、また特別な意味があるのだということが分かりますね。
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