『時をかける少女』 大林宣彦監督・原田知世主演作品
それなりに昭和の邦画をたくさん観てきた私としては、あえて観ないできたほとんど最後の作品。
そして、公開から30年以上経った今日、初めての鑑賞。そして衝撃。
公開当時の大ブームをやり過ごし、ここまで封印してきたのには、いろいろ理由があったように思います。
まず、小学生の時にNHK少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー」を観てどっぷりはまり、原作を読んだという原体験的にこだわりがあったからでしょう。そのイメージをぽっと出のアイドルに崩されたくなかった。
もう一つは、単純に原田知世ファンではなかったということ。(今思えばその裏返しとして)同年公開の「アイコ十六歳」で主演し、のちにこの「時かけ」に続く尾道三部作最終作でも主演する富田靖子のファンをやっておりました(笑)。
初代「時かけ」公開時、私は19歳。大学生でした。友人には原田知世ファンがけっこういた記憶があります。彼ら、酒飲むと「知世ちゃ〜ん」と叫んでましたからね(笑)。
まあ、そんなこんなで避けているうちに観る機会を失っていった。さらに追い打ちというか上書きするかのように、リメイクが増産されていった。それらを観てまたガッカリするうちに初代はさらに遠のいていたというのが実際のところでしょう。
で、今年5月、NHKBSで放送されたのをなんとなく録画したんですね。本当になんとなく。しかし、やはり観ないでいた。観る気が起きなかった。
しかし今日、どういうわけか、突然観始めてしまったわけです。そうしたら、もうすっかりその異様なる世界にとりつかれやめられなくなってしまった。
これはいったいなんなのですか?はっきり言って想像以上にシュールすぎる作品でした。
これはホラーですか?三流映画ですか?ハイレベルなギャグですか?ATGですか?寺山修司の実験映画ですか?壮大なるイメージビデオ(フィルム)ですか?斬新なPVですか?それとも現代能ですか?
いやはや、今まで観た無数の映画の中でも、これほど言葉にならない、評価できない作品はなかった。普通だったらB級で片づけられそうだけれども、しかしそうはいかない。そうさせてくれない。なんなんだ。
細かい技術的なことや、各シーンの突っ込みどころは他の人に任せましょう。そう、最初は突っ込みどころをチェックしながら観ていたのですが、結局最後はそんなのを全部吹っ飛んでしまい、感動すらしてしまった。
なんなんでしょう。このゴージャスな切なさは。原田知世という女優、いや女の子の不思議すぎる魅力。松任谷夫婦のハイレベルな音楽。そして何より尾道の美しい街並み。
そうしたゴージャスさの中に鏤められた絶望的なチープさ。もうそうしたギャップ自体が現実離れしており、そうした構造そのものが「超次元」です。タイムリープとかテレポーテーションとか、そんな些末なテクニックはどうでもよくて、あの世界そのものが超現実であり、ドラマであり、映画であると。
過剰な演出、単調なセリフ回し(棒読み?)、死生の交差。あえて言うなら、やはり「能」ですね。
正直やられた!という感じです。この歳になって、こんな作品にこれほど衝撃を受けるとは。いやぁ、今まで温存しておいて良かった…というか、今日急に観ようと思って良かった。
もし、観ないまま死んでいたら…私はあの世という超次元世界で路頭に迷ったかもしれません。
おそるべし、原田知世。そして大林宣彦。いや、角川春樹。降参です。
最後に。やっぱり「時間は未来から過去に向かって流れている」んですね。
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