とりあえずビール
今日はPTA主催のBBQ大会。たくさんの生徒、保護者、先生方が集まって楽しい時間を過ごしました。
大人の男子会パートは、さっさと肉や野菜を焼いて、あとはひたすらお酒をいただきました。
私も「とりあえずビール」で乾杯。あとは、首相からいただいたオーストラリアのワインや新潟の日本酒をいただきました。
ところで、この「とりあえずビール」ですが、高度成長期以降に一般化した常套句であります。
宴会の乾杯用、すなわち一番最初のお酒として、サーバーから直接つがれるため時間や手間がかからず、なおかつジョッキという乾杯しやすい形で出てくるビールに人気が集まったのが、その頃からということです。
日本で最も飲まれているビールのブランドはアサヒでもキリンでもなく「とりあえずビール」だというのは、桂文珍さんのネタだったでしょうか(笑)。
ただ、最近ではお酒も多様化しましたし、また、集団意識の変化もあって、若者の中では「とりあえずビール」を好まない人が増えてきたとのこと。ブランド価値が下がってきたわけです。
実は私も炭酸があまり得意ではないので、一杯目から冷酒を頼む派であります。
しかし、やっぱりバーベキューと言えば屋外ですから、ビールですよねえ。特に今日は自宅から会場まで山道を40分ほど歩いて行った(飲みたかったので車で行かなかった)ので、気分はビールでありました(笑)。
この「とりあえずビール」の「とりあえず」ですが、皆さんの認識のとおり、「他のことはさしおいて」「間に合わせてとして」という意味です。なんとなく、主役や本題はあとに控えているような感じですね。
古語の使用例を調べてみますと、そのような意味で使われているものとともに、「すぐに」という意味でも使われています。
それは現在でも「取るものも取りあえず」の形で残っていますね。たしかに、「とりあえずビール」も「取るものも取りあえずビール」と言えないこともない。たとえば私だったら「日本酒も取ることができずビール」ということです。
この「あえず(あへず)」は、漢文の「敢不」あるいは「不敢」の訓読から一般化した言葉であると考えられます。
漢文における「敢不〜」は「あえて〜せず」、「不敢〜」は「あえては〜せず」で、前者は全部否定、後者は部分否定と説明されます。
それが独立して日本語に取り入れられ、「あえず」だけで「耐えられない」「我慢できない」というような意味で使われるようになりました。万葉集や源氏物語にもそのような例が見られます。
それが動詞の連用形に助動詞のような形でつくようになり、「〜できない」「〜しきれない」という意味で使われるようにもなりました。「取り敢えず」はそのような例の一つですから、もともとの意味はやはり「取ることができない」「取りきれない」ということになります。
「とりあえずビール」に戻って考えてみますと、「取ることができないでビール」「取りきれないのでビール」のような原義であることが分かります。先ほどの「取るものも取りあえずビール」と同じニュアンスになりますね。
つまり、「とりあえず」の裏側には必ずビール以外の主役、本題、メインメニューがあるということですね。ビールはあくまで脇役であると。
ま、人によってはビールこそが主役という人もいるわけで、そういう人にとってはたしかに「とりあえずビール」というのはおかしい感じがしますよね。
というわけで、昼間っから飲み過ぎたので、「とりあえず寝ます」(やるべき仕事はあるけれども)。おやすみなさい。
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