『やくざと芸能と–私の愛した日本人–』 なべおさみ (イースト・プレス)
実に面白かった。事実とすれば、それはそれですごいですし、多少なりとも誇張があったとしても、たしかに昭和の空気にはそういう部分があったことは記憶と一致していますから、それはそれで物語として楽しめます。
この本は単純な暴露本ではありませんね。そういう意味では、昨日紹介した「八百長」とは大違いです。決して悪口は書きません。悪口を言わないというのは、なべさんが尊敬する親分の特徴でもあります。
まあ、ある意味、裏の裏、懐の奥の方まで知り尽くしていれば、大鳴戸親方のように軽々しく批判はできませんよね。
やくざの世界と角界、そして芸能界のつながりは当然ありますし、そこには非常に深い文化的、宗教的な意味があります。それはたとえば『実録 神戸芸能社』を読むとよく分かります。
今ではその関係は希薄になったとはいえ、完全になくなったわけではありません。相撲や芸能が「神事」であるかぎり、その道の方々との関係は断ち切ることはできません。
この本にも出てきますが、やくざの世界と天皇家のつながりは、ある意味非常に深い。そのあたりの記述も大変勉強になりました。
冒頭から、私の記憶に残る偉大な芸能人の方々の名前がこれでもかというほど出てきます。また、私の育った大森も雪ヶ谷も出てきたり、本当に自分の少年時代の空気を思い出さずにはいられませんでした。
あの「空気」は、実は現代の都市の裏側にしっかり存在した伝統的な「日本」が醸し出すモノだったのでしょう。
それにしても、なべおさみさん、こんなすごい人だったとは(笑)。人は見かけによらないものです。
後半の学問的な「やくざ論」も面白かった。ユダヤ、秦氏、渡辺氏、弾左衛門、嘘部、天皇家などなど、私好みの話題が連続します。
多少、我田引水的ななんちゃってアカデミック感もありますけれど、シロウトとしてはよく研究していると思います。私も初めて知るようなことがいろいろありました。
やくざの世界、それこそアジールであり、マージナルであります。そうした「モノ」世界を大切にしないと、私たちの心は乾いてしまいます。
たとえば、相撲やプロレスや歌謡曲がない日本なんて…少なくとも私には想像できません。
この本の最後には、安倍晋太郎氏の話が出てきます。そう、政治も「まつりごと」ですからね。納得です。
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