『八百長 相撲協会一刀両断』 元大鳴戸親方 (鹿砦社)
大相撲マニアの高校生が貸してくれました。彼は正義感が強く八百長が大嫌いです。
この本が出版される寸前、この本の著者大鳴戸親方とこの本の中での重要な証言者橋本成一郎氏が、同じ日、同じ病院で、同じ病名で急死しています。
これはもちろん偶然などではないに決まっています。野暮なことをした報いです。
八百長も、それを告発することも、行き過ぎると良くないという教訓ですね。
ちなみに私は、(本来の)八百長は大切だと思っている立場です。以前大相撲とプロレスについて書いた記事を御覧ください。
今こそ「八百長」の精神を!(2008.10.03)
スポーツかそれ以上か(八百長問題について再び)(2011.02.06)
二つ目の記事を書いた1か月後、中止になった春場所の期間中に東日本大震災が起きました。千年以上続いてきた「地鎮」の神事を怠ったからだと、私は真剣に思いました。大難を小難にできなかった。荒魂をもって荒魂を制し、和魂を召喚することができなかった。
その後の大相撲はいまだに迷走しています。ご存知のとおりです。
逆に、プロレスは震災以降着実に復興を遂げています(総合格闘技はほとんど消えました)。面白いですね。いわゆる「八百長」に徹した祭、神事が自ずと生命力を取り戻したのです。
何度も言いますが、行き過ぎはいけません。本来の「八百長」が原始共産主義的な「和」、「利他」を目的としていたのに対し、現代のそれは「カネ」と結びつき、「利己的」なものに成り下がっていました。そして、それに対する極端なバッシング。いずれも間違っていたわけです。
昨日の記事に書いた「ろうプロレス」の番組で、百太聾選手がJWPの道場で「相手にけがをさせない関節技のかけ方」を教わっているシーンがありました(非常に興味深かった)。また、地方プロレスを紹介した番組では、試合後、観客の方が「お決まりのパターンで分かってるんだけど燃えちゃうんだよね」と語っていました。
祭にはそういう演劇性が重要です。しかし、そこに伴うべきものは、そうした演劇性(八百長とは言いたくない)の裏側にある本物の(ガチンコ)の強さであるのは言うまでもありません。
ホンモノが演じるからこそ、神に通じる何かが生まれるのです。命懸けの大芝居。
私たちも、実は上手にだまされるその裏側で、それがホンモノかどうかの審神をしています。それは芸術という広義の「演劇」において顕著です。音楽しかり、美術しかり、文学しかり。
大相撲もプロレスもまた芸術なのです。それは究極的にはスポーツと矛盾しません。キング・オブ・スポーツはアートなのです。
出口王仁三郎は「芸術は宗教の母」という至言を残しましたが、実は「芸術はスポーツの母」でもあるのです。
この本を貸してくれた生徒にも、そろそろこんな話をしようかと思っています。
Amazon 八百長 相撲協会一刀両断
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