子煩悩とは
子煩悩…よく使う言葉ですよね。たいがいの親は子煩悩です。
今日はこの言葉の本質について考察してみます。ブッダが語る子煩悩とは…。
ブッダは人間の煩悩(執着)の中でも、「子」と「財」へのそれを最もいけないものとして戒めています。分かりやすく言えば「子ども」と「お金」ですね。
そうそう、さっき久しぶりにマンション経営の会社から電話がかかってきました。丁重にお断りすると、「子どものために財産を残したいと思いませんか?」と聞いてきましたので、次のような話をしてさし上げました(笑)。
ブッダの言葉を集めたといわれる「ダンマパダ(真理の言葉)」に次のような一節があります。
「愚かな人」より抜粋。
「わたしには子がある。わたしには財がある」と思って愚かな者は悩む。しかしすでに自己が自分のものではない。ましてどうして子が自分のものであろうか。どうして財が自分のものであろうか。
「賢い人」より抜粋。
自分のためにも、他人のためにも、子を望んではならぬ。財をも国をも望んではならぬ。邪(よこしま)なしかたによって自己の繁栄を願うてはならぬ。(道にかなった)行ないがあり、明らかな知慧あり、真理にしたがっておれ。
また、「ウダーナヴァルガ(感興のことば)」の中には次のような一節もあります。
子どもや家畜のことに気を奪われて心が執着している人を、死は捉えてさらって行く。眠っている村を大洪水が押し流すように。
ここで言う「家畜」とは財産のことでしょう。今風に言えばやはりお金やお金に換算できるもの。
このように、人類史上最も頭が良く、宇宙の真理を悟ったお釈迦様は、子どもと財産への執着を離れることを説きました。そして、自身も実際、妻子や王子の座を捨てて出家しました。
ということで、私たちが日常的に使っている「子煩悩」という言葉は、もともと仏教における「子どもへの執着によってもたらさらる煩悩」から生まれたものと思われます。
日国を引いてみると、「子煩悩」の用例は近代以降のものしか載っていませんが、おそらく話し言葉としては江戸時代以前から使われていたものと想像されます。おそらくお寺のお坊さんの法話の中にでも出てきたのでしょう。
こう考えてみますと、たいがいの親が「子煩悩」であるということは、やはり人類はお釈迦様の時代からあまり変わっていないということですよね。
それどころか、最近では子煩悩度が上がっているような気が…(特に学校現場では強く感じる)。
ちなみに私は全く子煩悩ではありません。仏教を勉強してから意識し始めたわけではなく、生まれつきあまり親族に愛着がないのです。
こんなことを言うと、なんと冷たい人なんだと思われるかもしれませんが、周りの人たちを見ているとたしかに自分はそうだと思わずにいられません。自分の親や兄弟に対してもけっこう淡白なのです。
かと言って、親族に迷惑をかけているわけではありませんよ。ただ執着がないのです。特に自分の子どもに対しては、もちろん愛情はありますけれども執着はない。
ましてや、子どもが命!とか、子どもの成長、活躍こそが喜び!などという気持ちはほとんどありません。どちらかというと子どもはライバル。成長、活躍すると何クソと思う(笑)。
子どもは子どもで勝手に人生を楽しみ、たくましく生きていくと信じているとも言えます。親としてやってやれることは、まあ十数年、彼女たちが自立するまで飯を食わせてやって、あとは学費を払うくらいのことです。
仕事柄もあってか、どちらかと言うと自分の子どもよりも他人の子どもに愛情を注ぐことが多いかもしれません。長女は私の学校に通っていますし、下の娘も来年にはたぶん入学していきます。彼女たちにとっても、私の淡白さが、学校での居心地の良さにつながっているのかもしれません。
子どもは子どもで別に愛情不足や無関心だとは思っていないようです。きっと子どもも親に似て、親族への執着があまりないのでしょう(苦笑)。
そのおかげでしょうか、おそらく我が家はあまり悩み苦しみがない。お互いに執着があまりないからです。
とか言って、実はそれぞれ「我執」は人一倍強かったりして(笑)。
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