『集団的自衛権の深層』 松竹伸幸 (平凡社新書)
今朝の朝日新聞のニュース「のび太が武装しても自分を守れるかな」にはビックリ、というか笑ってしまいましたよ。
なんだか札幌の高校の先生が弁護士さんを招いて集団的自衛権の授業をやったのだとか。そこで、『米国は「ジャイアン」、日本は「のび太」。安倍晋三首相は集団的自衛権の行使容認で「日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなっていく」と胸を張ったが、「のび太が武装して僕は強いといっても、本当に自分を守れるかな」』と先生が語りかけたらしい。
集団的自衛権の行使の容認に関する是非は別として、とりあえずたとえが間違ってるでしょう。アメリカと日本の関係は、ジャイアンとのび太のそれなんですか?どう考えても違うでしょう。
あえて言うなら、ドラえもんとのび太の関係にたとえられるべきでしょう。ジャイアンにのび太がいじめられた時にドラえもんは助けてくれますよね。日米安保です。
では、ドラえもんが攻撃された時のび太がどうするかが、今回の問題です。
これまでは、のび太がドラえもんを助けるためにジャイアンを殴る権利はあれど、実際には殴ってはいけないという解釈だったわけですね。
と、こういうたとえをすること自体に拒否反応を示す方もおられるのですが、教育現場では子どもにまずは個人の問題として考えさせ、それをスケールアップしていく方法がベストだと私も思います。だからこそ、正しい比喩を使わなければなりません。
ドラえもんにたとえるなら、まさに原作のテーマがそうであるように、のび太はドラえもんに依存せず独立した存在になり、またジャイアンのいいところも認めながら、全体としての平和な関係を築いていかなければなりませんよね。
さてさて、先日の竹田恒泰さんとの対話の中で、「左翼から右翼に転向する人はたくさんいるが、その逆はいない」という笑い話がありました。なるほどそうかもしれませんね(笑)。
この本の著者松竹さんは共産党員でしたが、今は党を離れている(除籍になった)ようです。そういう意味では、案外この本は「深層」にまで踏み込めているかもしれません。つまり、バリバリの左翼でもバリバリの右翼でもない立場から問題を掘り下げているのです。
歴史的に実際どのように「集団的自衛権」が行使されてきたかを紐解き、そこから基本的に反対であるという立場を明確にし、そして最後は独自の対案を示しています。
正直に言うとですね…この本を読んでいて、もしかすると私は松竹さんの考えに近いのかもなあと思えてきたんですよ。つまり、現実に対処しながらも、憲法9条を戦略的(積極的)平和主義の道具(武器?w)として使うということです。
このブログでも何度か書いてきたように、私は憲法9条は改憲できないと考えています。それは平和憲法の発案者が昭和天皇であるという立場を取っているからです。
だから、(変な話ですが)霊的な意味で、最終的には国民投票によっても変えることができない、いやもちろん手続き的には可能ですよ、しかし、最終的には国民国家を超えた力が働くと信じているのです。形としては国民投票の結果であっても。
憲法は憲法として、未来の理想を語るべきものであり、そこへ向けてどのように法律を運用していくかという現実論が政治であると思っています。だからこそ、単純な左右では語れないのですね。
憲法の解釈というのはまさにそのプロセスであって、そういう意味では、現状下での今回の解釈は正しいと思っていますが、未来的には正解ではないとも考えています。
こういう分かりにくい(二元論的でない)立場を取ると、どちら側からも煙たがれるのがオチですが(笑)、私のこういう話をちゃんと理解して共感してくれる方もいるので(たとえば安倍昭恵さんはその一人です)、諦めず信じ続けたいと思います。
現状での解釈、運用ということで言えば、次の動画もぜひ御覧ください。非常に現実的な説明だと思います。そして、またこの現状を乗り越えて行かなければとも思うのです。
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