『発達障害と呼ばないで』 岡田尊司 (幻冬舎新書)
発達障害に関する研修に参加しました。
まず言語的な側面から一言。その研修、タイトルが「発達障がい…」となっていました。「害」を使わないようにしようという動きのことはよく知っていますが、だったら「障」はいいのかと純粋に思いました。非常にナンセンスだなと。
これこそ文字に対する相対的差別ですよね。
それから、これも昔からずっと言っていることですが、「名づけ」の功罪について改めて考えさせられました。
「いじめ」とか「モンスターペアレント」とかもそうですけれど、この「発達障害」もそうして名付けることによって実在化してしまうという部分がある。
今日はそれについて語ることがメインではないのでこのくらいにしておきますが、教育現場において「名づけ」が教師や親の思考停止や行動停止を助長している事実は指摘しておきたいと思います。
さて、今日の研修は、非常に一般的、すなわち初心者対象の内容でした。結論的には「発達障害は遺伝的要因によって発生するので、本人はもとより、親にも責任はない。社会が支援すべき」というもの。
それはそれでいいし、正しいとも思います。それをスタートにすることに私も異論はありません。
しかし、立場上様々なケースに遭遇する私たち教育者は、その結論一言で片付けられない多様性を日々感じざるを得ません。
また「教育」や「支援」がはたして彼ら彼女らにとってベストであるのか、常に考えさせられるのが実情です(というか、実情であるべきです)。
たとえばこの本を読むと、現場の人間としては非常に腑に落ちるところが多い。つまり、発達障害と愛着障害が混同されていたり、両者の関わりあいが無視されていたり、そういう現状があることはよく分かります。
しかし、一方で「愛着障害」という言葉(名づけ)にも傷つく親御さんがいらっしゃるのもよく分かるし、ではこれからどうすればいいのかということに私たちも悩んでしまうことも事実です。
また、この本の後半で述べられているように、「発達障害=天才」のように言い切ってしまうことにも抵抗があります。そういう可能性はあると知りつつも、それを全体に敷衍することは危険だと思います。
つまり、「正常」「標準」とされる領域の人間にも無限の多様性があるように、ややそこから外れたところにいる人たちにも無限の多様性があるので、やはり一絡げに「名づけ」で片づけられないということですね。
教育、特に近代学校教育の目的は「標準化」にあります。社会性の獲得、常識・教養の獲得という名目の上に、標準化を促していきます。個性や自主性の尊重などという言葉も聞きますが、それは案外教師の怠慢を隠すための詐欺的なスローガンにすぎないことが多いものです。
また、その教育が支えている、そしてその教育を生んだとも言える「近代社会」そのものが、「標準化」を目指してきましたよね。
特に平成に入ってからは、標準を外れたモノどもが実に住みにくい、生きにくい社会になってきたような気がします(プロレスやヤクザの世界を見てもそう思う)。
私も、ある意味「異形」のモノなので、たとえばそうしたモノどもの世界を霊的に捉えるという異常な思考や行動をします(笑)。たとえばこの前、諏訪の御柱祭に関わる人々と交流しましたが、そこでもそのようなモノどもと神とのつながりを強く感じました。
こうなってくると、まさにコト化(言語化・名づけ)のできない様相を呈してくるわけであり、また、それでもまだそんな世界でもがき続けることにこそ価値があるような気さえしてきますね。
つまり結論は出ないということです。そして、どれが正常であるか、標準であるか、異常であるか、障害であるかなどという、二分法的な思考自体が馬鹿らしいものだということに気づくべきだということです。
本当に難しい。難しくて当たり前。名づけによって、その難しさを安易に単純化するのは、どうも気に入らない。
私、教師として、標準を外れた子ども、学校価値観的に問題を起こす生徒たちの個性をうまく伸ばし、社会に貢献できる(すなわち自己肯定感をも得る)ように導くことに関して、思考的にも、技術的にも、愛情的にもけっこう得意な方だと自負していますが、それでも全てがうまく行くわけではありません。当たり前ですけどね。
ふぅ、本当に難しい。難しいから仕事なのでしょうね。この苦悩と闘っているから給料もらえているのでしょう。
なんだか今日は妙な文章になってしまいましたね。でも、これが私の本当です。
Amazon 発達障害と呼ばないで
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コメント
障碍(今はこの字を使うことも多くなってきましたよ)など、何らかのハンデを持った人が、生きやすい世の中になることが、本当の意味で成熟した社会になるのではないかと思います
投稿: ふなふな | 2014.06.08 10:05