『利他−人は人のために生きる』 瀬戸内寂聴・稲盛和夫 (小学館文庫)
私の、人生の究極の目標は「利他」です。
なんて言うとカッコいいけれども、実際のところは、「利他」は手段であったりします。
では、目的は何かというと、結局のところ「利己」だったりする。
どういうことかと言いますと、こういうことです。
私の仏教に対する理解は「自分が幸せになる方法は一つしかない。それは他人を幸せにすることである」です。お釈迦様のおっしゃったいくつかのことを自分なりにまとめるとそうなるのです。
で、これは言い換えると、「利己の方法は利他しかない」ということになりますよね。目的は「利己」だが、そのための方法が「利他」しかないと、お釈迦様という天才が証明してまったので、しかたなく(笑)その唯一の方法をとると。
こんなことを言うと、非常に不謹慎というか、不真面目に思われるでしょうね。
いや、それでいいのです。
実は昨日の朝まで学校行事で宿泊座禅をしていたのですが、やっぱりいくら「無我」や「空」の境地を目指してもなかなかうまくいかない。つまり、純粋なる「利他心」が自分の内側から湧いてくるということはないのですね。
おそらくは、間違った「利己心」の服をたっぷり着込んでいるので、今更それを脱ぎ捨てようとしても、それがなかなか難しいのでしょう。
そこで、私は、ある意味ずるいのですが、「利他」というタワシでワタシを磨こうと考えているのです。
そう、「ワタシ」という垢を落とすために「タワシ」でゴシゴシやるということです(笑)。
いや、けっこう真面目にそう考えているのです。いくら格好つけて悟ったようなフリをしても、ワタシはワタシがワタシのままであることをよく知っています。
あるいは、ちょっとワタシという服を脱いでみてもですね、すぐに寒くなってしまって、また着込んでしまうわけです。
もう、それが人間であると諦めているのです。だから、何かタワシのような強制力がないと、なかなかワタシは剥がれ落ちない。だから、「利他」でゴシゴシする。
「利他」でゴシゴシするというのは、どういうことかというと、そんなに難しくはない。「利己」が出てきそうになったら「利他」でそれを磨き落とす。つまり、「こうなったら自分が得するとか」とか、「これをやらなければ楽だな」とか、自分を利する行動を取ろうという想念がわいた瞬間に、「いやいや、そうすると人に迷惑や苦労をかけるから、逆の行動をとろう」と思うことにしているのです。
何しろ、ワタシは非常に利己的なので、タワシの出番が多い。ワタシが出たらタワシを出せばいいだけですから、そんなに難しいことではありませんし、テクニックもいりません。ほとんど反射的に言葉にすればいいだけです。
変な話だと思われるかもしれませんけれども、たとえば、私はこういうことを公言して人を惑わせるのです。
「同じお金(給料)もらってるなら、たくさん働く(人の仕事までする)方が得だ」
普通は逆の発想をしてしまいますし、実際、経済学や経営学でこんなこと言ったら笑われてしまいます。
しかし、上記のずる賢い(?)タワシ理論では、「お金をもらっている上に人のためになれる!」という、めちゃくちゃ得になるのです(笑)。
ちょっとイヤな言い方をすると、人の幸せまで取っちゃう。だって、人の仕事を取るということは、その人の「利他」を取っちゃうことになるじゃないですか。
まさに自分さえ良ければいいという「スーパー利己」ですね(笑)。
と、まあ、私のヘンチクリンな「利他」観はいいとして、もっとまっとうな「利他」について語られているのがこの本です。
私は、このお二人のような聖人にはなれませんなあ。この本を読んで「よし!明日から利他で生きよう」と思っても、やっぱり永く続かないんですよ。
だから、スーパー利己のためのスーパー利他という、スーパータワシを利用させていただくのです。
「やらない善よりやる偽善」と、プロレスラーの誰かさんが言ってましたが、まずはそこから始めないとダメなワタシでありました、ハイ。
この本に「寝食を忘れて働くのは、僧侶の修行に匹敵すること」という章があります。まったくその通りだと思います。働く、仕事、と言っても、会社や学校とか現場だけの話ではありませんね。
私は自分がこの世に生まれてきたのは、なにか神様から与えられたスケールの大きな仕事、働きがあるからだと思っています。
でも、「仕事を忘れて寝食してばかりいる」ようじゃダメですよね(笑)。ま、せいぜい口だけにならないようタワシをたくさん使っていいきたいと思います。
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