出雲と伊勢と諏訪と富士
今日は諏訪に行ってきました。先日の岐阜富山旅行の裏の目的は「諏訪」にあったのですが、実際には高速で通過するだけだったので、改めて行かねばと思っていたところ、岡谷にお住まいの知り合いの方からちょうど諏訪大社にお参りするとの話があり、急遽乗っからせてもらいました。
結果として、この5月はじめの旅がある程度完結したという感じです。ありがたや。
今回はまず富士吉田の北口本宮冨士浅間神社からスタート。
今まで何度も書いてきましたが、ここはもともと「諏訪神社」でした。有名な吉田の火祭りも諏訪神社の例大祭です。
なぜ、諏訪神社が浅間神社になったのか…それについてはこちらの記事参照。ただ、そこにも載せた私の思いつきツイートは今回の旅と思索でも生きています。
『諏訪神社と浅間神社のせめぎ合いは、縄文と弥生、龍神信仰と天皇制、北条と武田、水と火(神道と仏教もか?)のそれを象徴している。今富士山では浅間が勝っているように見えるが、火祭りで分かるように実は諏訪が実権を握っているのだ。鎮火のための火という矛盾の理由はそこにある』
今、このツイートに何かを付け加えるとしたら、「国譲り」でしょうかね。そう、負けて勝つ、無意識化して純粋保存するというやつです。
今回、諏訪大社を、前宮、本宮、秋宮、春宮の順で回ってみて、そのことを強く感じましたね。
もちろん、「国譲り」の神話は、古事記独特の「捏造」である可能性が高いわけですが、当然、「物語」は現実の比喩でありますからして、何か「国譲り」的なことがあった、あるいは「国譲り」的な情報は残しておかねばならない事情があったのでしょうね。
諏訪湖から見る富士山は実に神聖な感じがしました。遠く憧憬の対象になるとともに、何か近づきがたい感じがしたのも事実です。
「国譲り」と富士山…想像力をたくましくするなら、次のような新たな、そして古い「物語」を紡ぐこともできるでしょう。
西日本では、国つ神(縄文系民族)が、大陸・半島からの渡来した天つ神(弥生系民族)に次第に呑み込まれていった。出雲にそれなりの勢力を誇っていた部族も最後は天孫族に帰順する。
では、和魂(にぎみたま)と荒魂(あらみたま)に象徴される縄文系民族の自然観(宗教観)は消えてしまったのかというとそんなことはない。
和魂(幸魂+奇魂とも言われる)は、大物主に対する大和人の信仰という形で、のちに仏教と合流しつつ、伊勢(天皇家)に受け継がれていった。
一方の荒魂は当然すんなり帰順するはずはない。おそらく一部の武力勢力となって最後の最後まで抗ったにちがいない。その比喩がタケミナカタである。
彼(ら)は次第に東に逃げ延び、東西を高く分断している日本アルプスを北に迂回してから内陸に後退しゲリラ戦を試みる。そこには、独特な信仰を持つ諏訪の人々がいた。出雲(縄文系・国つ神)の荒魂たるタケミナカタは、土着の龍蛇信仰と結びつきシャーマニズム的な最後の反抗を試みるが、最終的に和平工作に応じる。すわなち、停戦することと引き換えに諏訪に居住することを許されたのである。
タケミナカタにはさらに南下するという道もあったが、かの富士山を諏訪湖越しに望んだ時、その幽玄たる姿と、噂に聞いていた富士高天原伝説の記憶とが結びつき、あそこには近づけないと直観したのである。
富士山があのような姿に見えたことが、古来の諏訪を、現在の諏訪に変化させたとも言えよう。
今や、諏訪の祭神は建御名方であるが、本来の諏訪信仰の対象はミシャグジ神である。今その古態をとどめているのは(ワタクシの霊感的には)前宮である。
前宮は守屋山を御神体として、ミシャグジ神と呼ばれていたかどうかは別として、独特な龍蛇神を祀っていた。そこには既に四本の御柱を立てる習慣があった(逆に言えば鳥居や神殿はなかった)。
タケミナカタはその古態を守ると同時に、自らの持ち来る「荒魂」を祀る社を創ることにする。それが、諏訪湖を挟んで、まるで四本の御柱のごとく建つ、現在の四社である。すわなち、一の柱は前宮なのである。
富士山に近づけなかったタケミナカタは、その後富士高天原の凋落とともに、ようやく南下をする時を得る。そして、八ヶ岳や富士山をも包括した巨大(新)諏訪信仰圏が完成する。
しかし、それもまた…
と、私の妄想はキリがないので、このへんにしておきます。とにかく、今日は耀わん「十和田」と「諏訪」を伴って諏訪湖周辺を巡りまして、このような物語が私に降りてきたのであります。
では、具体的にどういうふうに降りてくるのかについては、明日にでも書きましょう。
そして、富士山の諏訪神社が浅間神社になっていったのか。
また、大きく分けて、伊勢と諏訪に二分された「和魂」と「荒魂」はどういう形で再合流すべきなのか。
いろいろと面白くなってきましたね。
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