農業の工業化
今日は中高のPTA総会がありました。夜は役員さんとの懇親会。そこでいろいろな保護者の方といろいろな話で盛り上がりました。
私のような世間知らずのセンセーにとっては、そういう機会は貴重です。一般企業で汗水流しておられる方々のお話を聴くのは本当に勉強になります。
そういう保護者の方々から「先生、先生」と言われるのは本当に恥ずかしいですね。皆さん、それぞれのお立場で社員をしっかり「教育」されているわけで、私からすれば皆さんの方がずっと「先生」と呼ばれてふさわしい人たちなのですから。
つくづく学校の先生というのは甘い仕事だと思いますよ。
さて、そんな勉強になる話の中で、「農業の工業化」に関する内容が心に残りました。
「農業」と言えば「食」に直接つながるわけですから、人はそれらに関してある意味感情的、感傷的になりがちです。
決して否定するわけではありませんけれども、極端な「食へのこだわり」にはちょっと違和感を抱きます。
もちろん、玄米菜食主義や無農薬有機農法、あるいは露地物へのこだわりなど、それはそれで趣味としては大いに結構であります。
そうそう、この前ちょっと紹介した「フード左翼とフード右翼」にもありましたように、左翼的思考の方々には、そういう「自然食」傾向が強い。そういう意味では非常に「保守的」であって、ちょっとした(いや大きな)矛盾が生じているところが面白いわけです。
一方の右翼はなぜかアメリカのジャンクフードに抵抗がなかったりするわけで、それもまた変な話と言えば変(笑)。
皮肉なことですが、「左右」の理想主義は、どちらも実は非常に自己中心的、自己実現的、自己満足的なところに閉塞してしまっている(他者と言っても、せいぜい「家族」「国家」くらい。どちらも「家」を出ていない)。
結局、そこでも「左右」を超えた発想が必要だと思うんですよね。
で、たとえば左右を軽く超越している仲小路彰なんかは「農業の工業化」を早くから提唱していました。
私も最近、それを推進すべきがと主張しています。
分かりやすく言えば、農産物を工場で大量生産するということです。
もう、こう言うだけで嫌悪感を抱く方もいらっしゃるでしょう。これもまた、工業(近代)が農業(前近代)の敵であるという固定概念から生じるものであるかもしれません。
考えてみれば、基本的な農業の形態は2000年以上も変わっていません。土を耕し、そこに種を蒔いて水をやり収穫する。
そこにある種のノスタルジーや、あるは宗教性を見出すのは悪いことではありませんし、私も当然それはそれとして大切にしているつもりです。
しかし、これだけ世界が近代化し、人口が増え、食糧不足、さらに農薬や化学肥料の危険性、加えて放射線への恐怖などが叫ばれ、さらにさらにTPPによってどうのこうのと言われている今こそ、実はようやく二千年の呪縛から解かれるチャンスではないのかとも思うのです。
もちろん、すでに国を挙げてそのような研究は進められています。第六次産業化などもその一つでしょうね。
企業の方でも、三菱化学の植物工場や大和ハウスのアグリキューブの例にあるように、ビジネスチャンスととらえて異業種から参入していこうという動きも見えます。
日本は「農業」も「工業」も、両方とも得意という稀有な国です。今まで対立していた、第一次産業と第二次産業を統合するという意味においても、「農業の工業化」を進めることはいいことだと思います。
この狭い国土でこれだけの人口を支えるためには、大規模植物工場を建設稼働するのが一番手っ取り早い。実は露地物よりもずっと安全性を担保することができるし、天候や病害による生産量の減少も防げます。
輸入品に対する様々な不安のことを考えるのなら、ここで思い切って、農産品の国産化を推進するべきなのです。
そのためには、今までの「こだわり」「常識」を捨てなければなりません。それこそ二千年の呪縛からの解放です。
もちろん、従来の農業をやりたい、そういう過程で作られた野菜にこだわりたいという方には、それを続けていただいてかまいません。多様なニーズがあって当然ですから、多様な供給の形態もあって当然です。
農業従事者の高齢化によって、国が守ってきた旧来の農業は今、本当にギリギリの状況にあります。ちょっと過激な言い方になってしまうかもしれませんが、それをチャンスととらえて、終わるものは終わらせてもいいのではないかとも思います。
衣食住で言えば、「食」は「工業化」が大幅に遅れています。機械化は進みましたが、根本的な工業化はほとんど進んでいないのです。
仲小路彰の「未来の農業」観はすごいですよ。原子力農業にまでイメージが膨らんでいますからね。やはり天才の発想は違うなあ。歴史を全て知り尽くしているからこそ、その歴史(知識・常識)から解き放たれているのでしょう。
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