『TOKYOオリンピック物語』 野地秩嘉 (小学館)
読んでいて思わず興奮してしまいました。当時のエネルギーの集中と高まりががぐいぐい伝わってくる。
特に私が興味を持ち、また力をもらったのは、ロゴやポスターなどをデザインした亀倉雄策さんと、選手村の食事一切をプロデュースした村上信夫さんです。
オリンピックは「スポーツと文化と教育」の祭典です。決してスポーツだけの祭ではありません。
50年前の東京オリンピックは、まさに「スポーツと文化と教育」が融合し、結果として「平和」と「未来」を発信する素晴らしいイベントになりました。
その「文化」の中心にあったのが、私は「デザイン」と「食」であったと感じています。私は「文化」すなわち「culture」とは、まさに「ciltivate」、大地を耕すところから生まれるものだと考えています。
違う言い方をするなら、「その土地の自然環境が人間の営みを通じて現れたもの」と捉えているのです。たとえば衣食住の文化は、明らかにその土地の自然環境がベースにありますよね。また、音楽や絵画や文学なども、結局のところ、その土地の風土が濃厚に表現されるものです。
そういう意味でも、「デザイン」と「食」というのは、オリンピックにとって非常に重要な要素となりえます。
「デザイン」にせよ「食」にせよ、国際的なイベントであるオリンピックにおいては、その開催国らしさ、すなわち「日本らしさ」とともに、それぞれの参加国らしさ、さらには全てを抱合したある種の「地球らしさ」をも要求されます。
この本ではほかにも(選手以外の)多くの部門の超一流日本人が取り上げられていますが、やはり、「デザイン」と「食」には、上記の意味での「文化」が明確に現れていると感じました。
その「日本的」なるものとは、すなわち「和」です。「和」については、いろいろなところで語ってきましたが、基本は神道の「和魂(にぎみたま)」です。
そこには、単に「平和」という意味ではなく、「調和」の意味もありますし、「足し算」の意味もあります。もちろん「にぎやか」という意味も。
つまり、「日本的なるもの」が、実は「地球的なるもの」そのものにつながるということです。私は、半世紀前の東京五輪で初めて日本人はそれを、無意識的に(!)意識したのだと思います。
そして、6年後の東京五輪では、今度は「意識的に意識する」ことになるに違いありません。ぜひそうあってほしいものです。
だからこそ、次の東京オリンピックでも、「デザイン」と「食」は大切にしたいと考えています。それと、昨日の新幹線にあたるリニアや、それに伴うとも言える核融合炉発電などの科学技術。
それら「和の文化」の象徴として富士山を中心に据えたい…そんな妄想を何度も書いてきましたね。
そんなことを考えていたところに、昨日紹介した新幹線開通にまつわるお宝と一緒に、1964東京五輪に関するグッズが父親から送られてきました。
今日はそれを紹介しましょう。シンプルかつダイナミックなデザイン。
昨日書いたように、私は1964年の8月に生まれ、開通したばかりの新幹線に10月5日に乗りました。そして父は10月24日、オリンピックの閉会式を観に行ったそうです。確認すると、開会式は抽選に漏れたが、閉会式は当選したとのこと。
どうですか。本当に素晴らしいデザインです。
ある意味、これ以上のものを6年後に創るのは難しい…と思われるほどのクオリティーの高さです。
だからこそ、次期東京五輪でも各部門のトップの人選は重要なのです。競技者の人選は記録によることができますが、文化、教育部門の人選は難しい…。
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