『アナと雪の女王』(ディズニー映画)
全く想定外、そして全く望んでいなかったのですが(笑)、ひょんなことから「アナと雪の女王」を映画館で観ることになりました。
2Dの字幕版です。
結論から言いますと、それなりに面白かったし楽しかった。ある種の職人的作品であり、たしかに文句のつけようのないほどのクオリティーの高さであったと思います。
まあ、これを「アニメーション」と呼んでいいのでしょうか。アカデミー賞で「風立ちぬ」と競り合ったかどうか知りませんが、このフルCG映画をアニメと同じ土俵で戦わせていいのでしょうかね。まあ「非実写映画」というくくりなのでしょうが、そんなこと言ったら、実写映画にもCGがた〜くさん入り込んでますから、もうそのカテゴライズ自体が難しいというか、意味がないような気もしてきます。
たとえばコンピューター・アニメーションの可能性を追求するというのと、アナの肩のあたりのボツボツ(笑)をリアルに表現することとは、どのように整合しているのか…どうでもいいことかもしれませんが、なんか気になっちゃいました。
音楽がかなり良く、また私の聴いたところたぶん生演奏だった…いや、なんか自信がなくなってきたぞ、もしかして、あれもまたデジタル打ち込みなのか?もしそうだとすると、それこそ、あそこまでリアルにやるんだったら、本物のオケ使えよ!ってことになる。
そう、日本だと、デジタルはデジタルとして割り切って、たとえば初音ミクみたいに、ある種リアルさを切り捨てることによって、別のリアリティーを求めるじゃないですか。アニメも同じ。浮世絵みたいに。
それが、やはりディズニー(アメリカ)だと、向かう方向が「写実」になってしまっているなと。ま、そこは好みの問題なわけですが。
テーマは「真実の愛=自己犠牲(利他)」であると感じましたが、今回私はちょっと違うことも考えながら観ていました。
この映画、原題は「Frozen」。街が雪と氷に閉ざされるお話です。
そう、私は映画を観ながら、この冬の山梨の大雪を思い出してしまいました。
ああ、あれもやっぱり魔法のしわざだったのかと。
私は日本的に、神様の「荒魂」の発動みたいな言い方をしてきましたけれど、それが西洋では魔女の魔法のような言い方になるんですね。
そして、その魔法を解くために人間が奔走する物語が多い。日本では、もうお手上げで人は「待つ」ことしかしない。そこが違うなと。
そうこの映画でも人間の「愛」の力が神(自然)を動かすというような感じですよね。ある意味、人が神より上位にいる感じがしました。「愛」という言葉によって。
もちろん本来の西洋文化(キリスト教を中心として)は、「神の愛」が上位概念としてありました。しかし、近代文明、特にアメリカ的な発想では、人の愛、それもこの映画が象徴していたように、男女間の愛という次元ではない「人類愛」が存在するという確信のもとに、ヒューマニズムが宗教を超えてしまいました。
いや、それがいけないと言うわけではないし、「グローバル・ファミリズム」を提唱するワタクシとしては、それが理想とも言えるのですが、やはり北欧(と思われる)を舞台とした物語としては、「神」が登場しないことに違和感を覚えたのも事実です。
やはりディズニーは「神話」を排除するのですね。
ただ、大まかに見れば、やはり「荒魂」の発動によって、結果として「和魂」が召喚されるという、日本的神観が表現されていたとも言えますかな(そんなこと考えながら観るのは私だけか)。
最後に。この映画、大人は字幕版で観た方がいいですよ。
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