『混同秘策』 佐藤信淵
秋田ネタが続きます。昨日は、土方巽のグローカリズムについて書きましたが、彼の大先輩とも言える江戸時代の鬼才佐藤信淵の(トンデモ)グローカリズムを紹介しましょう。
実は私もちゃんと読んでいないので、詳しくは書けませんが、とりあえず皆さんにも(特に秋田の方々に)知っていただきたく思います。
佐藤信淵は現在でいう羽後町郡山の出身です。郡山は土方巽にも縁の深い土地。土方は実際には秋田市方面の出身だったのですが、なぜか「羽後町新成郡山」の出身だと主張していたと言います。
私は以前、土方の親戚にあたる方のお宅を訪問したこともあります(こちら参照)。土方が「遊んだ」お蔵の中をみせてもらいましたが、そこはまるで舞踏空間のような独特の雰囲気がありましたね。ああ、これこそ、土方が秋田から世界に持っていった「闇」だなと。
郡山地区は何の変哲もないのどかな田園地帯ですが、なんでしょうね、私にとっては、佐藤信淵と土方巽に関わっているというだけで、非常に特別な感じがします。
というか、今気づいたのですが、土方は佐藤信淵のことをよく知っていたのではないでしょうか。それで、憧れの深淵と同郷というストーリーを作ったのかもしれませんね。ああ、きっとそうだ。
天才土方巽が憧れた(に違いない)佐藤信淵もまた、ある種の世界的天才であります。
佐藤信淵という思想家を一言で言うのは非常に難しいのですが、たとえば、こんな説明はどうでしょう。
明治維新の45年前に次のようなことを主張した男です
・日本は世界で最も古い国である。
・日本が世界の中心になるべき(すなわち世界が日本化すべき)である。
・「東京」(という名称を使っている)に遷都すべきである。
・八丈島や小笠原諸島を開発し、フィリピンなどの資源も活用すべきである。
・国内が安定してのち、満州から中国を制服し、さらにヨーロッパへ侵攻すべきである。
まあ今なら「超国家主義者」「トンデモ」ということになってしまうかもしれませんが、実際に「東京」遷都も行われ、のちの富国強兵政策や八紘一宇政策を見れば、ほとんどが実現したと言えるかもしれません。そういう意味では、非常に先見的、あるいは現実的な思想家であったとも言えます。
実際に、明治の政治家や思想家は、佐藤信淵の書物を読み多くの影響を受けています。江戸時代にはほとんど顧みられなかった彼の書物は、明治時代には実にたくさん出版されました。
一般国民にも彼の名前はかなり浸透していたようです。なにしろ「佐藤信淵」という歌まで作曲されているくらいですから。
上記のような内容が書かれているのが、1823年(文政6年)に著された「混同秘策」です。
「混同」とは、「ごったにする」「間違う」というような今のイメージとは違い、読んで字の如し「混ぜて同じにする。一つにする」という意味です。
すなわち、「混同秘策」とは、世界中の国々や地域を混ぜて「日本」という一つの国にするための「秘策」ということなのです。
明治時代に刊行された「混同秘策」が国会図書館のデジタルライブラリーで読むことができます。こちらです。
佐藤信淵の超国家史観(皇国史観)は、たとえば、私の研究している宮下文書や、出口王仁三郎、さらに仲小路彰にもつながっています。実際、仲小路彰も著書の中で佐藤信淵をかなり詳細に分析紹介しています。
江戸の末期あたりから流行したそうしたウルトラ国家観というのは、実は地方発だったりするのです。いわばローカルのコンプレックスから突然グローバルへ爆発するというか。
佐藤信淵も大きな影響を受けた、同じ秋田出身の平田篤胤もそうですよね。東北というブラックホールで爆縮していくその裏側で、ホワイトホールが出現したという感じです。
戦後、こうした空気は再び封印されてきました。もちろん世界戦争の反省もありましたし。
私は、再び「グローカル」な時代がやってくるような気がしているのです。次元の上昇したグローカルの再来です。
私が仲小路彰や出口王仁三郎、そして佐藤信淵らを評価すると、すぐにウルトラ・ナショナリストだとか言われてしまいます。もちろんそんな次元での話をしているわけではないのですが。
とりあえず、彼らの言葉に耳を傾ける必要があるでしょう。最初から否定したり無視したりするのは間違っていると思います。
すなわち、「方言」に耳を傾けるということですね。
Amazon 佐藤信淵の虚像と実像―佐藤信淵研究序説
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