「紫雲丸事故」と「ありあけ事故」
韓国のフェリー「セウォル号」の沈没事故。本当に心が痛みます。
我が校は伝統的に韓国への修学旅行を実施しているので、全く人ごとではありません。
今回の事故では、信じられないような人為的ミスや人道的問題点が明るみに出ていますね。これは単に韓国というある種特殊な国での出来事であり、日本ではありえないことなのでしょうか。
日本国内ではこのような事故がなかったのかというと、決してそんなことはありません。今日は、私が思い出した日本でのフェリー事故について書きます。
まず、修学旅行中の子どもたちが犠牲になったということでいうと、1955年の紫雲丸事故は悲惨でした。5月11日、宇高連絡船「紫雲丸」が同航路の「第三宇高丸」と衝突、沈没しました。
紫雲丸には、修学旅行中の広島県内の小学生が多数乗っており、結果として100名の児童が亡くなってしまいました。
沈没の原因が衝突ですので、セウォル号のケースとは状況が違いますが、船長をはじめとする乗務員、あるいは学校の先生の対応は概ね適切であり、それぞれの職務、責任を果たしたと評価されています。
中村船長は退船を拒否し、ブリッジに残って船とともに海中に沈みました。ちなみにセウォル号の船長は契約社員だったとか…。
衝突相手だった第三宇高丸は、傾く紫雲丸の危険を察知し、自ら身を挺して全力で紫雲丸を押し続け、その結果沈没を遅らせ、また多数の乗員の移乗を成功させました。その判断も適切であったと評価されています。
また、多くの地元の漁船が救助活動にあたり、特に児童の救出に活躍したようです。
衝突自体は濃霧の中での人為的なミスでしたが、その後の対応には学ぶべき点があると思います。
ところで、この事故では、多くの児童が泳ぐことができず犠牲になりました。その反省に基づき、全国の小中学校にプールができ、体育で水泳の授業が必修となりました。こういう国は日本くらいなんですよね。特に、着衣水泳なんか、韓国はもとより外国では考えられないことです。
さて、続きましてはつい最近、5年前の事故です。けっこう忘れている人も多いのでは。
今回のセウォル号を以前所有していた日本の会社が起こした事故。フェリー「ありあけ」はセウォル号とほとんど同じ船です。
ありあけは高波を受けて傾き、積み荷の固定がはずれてバランスが崩れ転覆。セウォル号と似た部分もありますね。
ただ一般の乗客は7人だけだったこと、海上保安庁への救助要請が早かったこと、海保の指示と船長の判断により、傾いたまま自力航行して陸地に近づけたため、結果として全員救助後、座礁して沈没を免れたことなどは、韓国の事故とは大きく違います。
このような経験をしている日本としては、様々な救援策を持っていると思うのですが、なぜか韓国側は日本の協力要請を拒否していますね。
まだ救助作業が続いている中で、軽々しい発言はしたくありませんが、やはり、安全対策、あるいは緊急時対応の準備に関して(学生の水練も含めて)、日本と比べて韓国はかなり劣っているのではないかと感じました。
私も修学旅行で何度も韓国を訪れていますが、そのたびに正直大丈夫かなと思うシーンがありました。これから学校としてもいろいろと考えていかなければならないですね。
それから今、職員室で話題になっているのですが、例の自分の子どもの入学式に出るために担任するクラスの入学式を欠席した先生の話、あれと、いち早く避難した今回の船長の話、微妙にかぶってくる部分がありますよね。職業観というか、職業的責任感というか、権利と義務のバランスというか、過剰な人権至上主義というか、個人と共同体の関係というか…。
いずれこれについても語りたいと思います。今は我慢せよと周りに言われているので(笑)。
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