『手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから』展 (山梨県立博物館)
ちょうど1週間前の月曜日に行って来ました。報告するのを忘れていました。
東京、広島、大阪を巡回して、春休みに山梨にやってきたこの展覧会。他の開催地では大いに盛り上がっていたようですが、山梨はあまり人がいなくて少しさびしい感じ。
特に子供がほとんどいなかったのにはびっくりしました。春休みなのになあ。というか、今どきの子どもたちは手塚&石ノ森作品には興味ないのか…。
私自身も、まあ人に比べると「マンガ少年」ではなかったタイプなので偉そうなこと言えませんけれど、それでも非常に興味深い展覧会であったと思います。
まずは、お二人の神様の「原画」がたくさん観られたこと。小学校時代の落書きや紙芝居から、松本零士さんが所有していたという初公開資料まで、本当にたくさんの「肉筆画」が展示されていました。
これはマニアならずとも興奮ものですね。やはり原画独特の勢いというか、リアルさというか、生命感というか、もうその時点でお二人が特別な才能をお持ちだったことがよく分かります。
それから、お二人の作品の変遷を観ることによって、昭和史、特に思想史の総復習になるようにも思われました。
と思っていたら、後半の第3部に「いのち、ふるさと、あきらめない、死、ヒト、科学、愛、戦争と平和、自然の脅威、女性像、音、映像的表現、時間」というテーマごとにお二人の作品を紹介するコーナーが設けられていました。
私たち昭和世代の日本人、特に男は、彼らが時代から抽出した、あるいは彼らが時代をリードした思想を共有してきたんですよね。そこにはもちろん「原子力」なども含まれています。
そういう意味では「マンガのちから」には功罪両面あるということも考えておかなければなりませんし、もちろん平成においても、マンガやアニメが子どもたち(つまり未来の大人)に与える影響は非常に大きいということですね。
「おとなはムカシへ。こどもはミライへ。」という、この展覧会のテーマにはそういう意味もあるのかなと。
世界における日本の「MANGA」文化は今後も発展を遂げるでしょう。手塚さんや石ノ森さんが、日本のミライの大人のために描いたように、これからのマンガ家さんたちは、世界の未来を想像しながら作品作りをしていかねばなりません。
はたして今、それに相当する作品があるのか。私は今ほとんどマンガを読みませんので、なんとも言えませんが、なんというかなあ…イメージとしては「私小説」のごとき「私マンガ」、つまり内向きのマニアックな作品、あるいはある種微視的な特殊環境(たとえばマイナーな職種とか)を舞台にしたスケールの小さな作品が多いような気がします。
この展覧会で再現されていたトキワ荘の住人がそうであったように、私生活を原点としながらも、作品は世界や宇宙に飛び出す、あるいは日常に非現実が展開するような、スケールの大きさが必要なのではないでしょうか。
子どもを育てる仕事をしている私は、自分の責任も含めて、いろいろと考えてしまったのでありました。
展示の内容に関しては、こちらでんぱ組.incの二人によるレビューをご覧ください。
山梨の方、この展覧会5月19日までやってますので、ぜひぜひ。私ももう一度子どもを連れて行こうと思っています。
6月からのシンボル展「広重の不二三十六景」も、ある意味マンガの原点ですね。
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