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2014.04.19

BUMP OF CHICKEN 『RAY』

513qydmkfel_sl500_aa300_ 「所」を探す物語。
 ずいぶんと遅くなってしまいましたが、BUMP OF CHICKENの新譜「RAY」について書きましょう。秋田シリーズの続きとも言えますね。藤原くんは秋田市の出身です。
 ここ数日で紹介した秋田にまつわる偉人たち、土方巽、佐藤信淵、白井晟一、そして藤原基央、みなある種の「翳」がありますね。おそらくそこに共通しているのは一言で言うなら「内省」ということでしょうか。
 内側に関心が向かい、内側に矛盾を感じつつ、いつかそこを突き抜けて、自己を客観視することによって世界像をつかむ。
 そんな気がします。秋田という風土がそういう文化を生んだのでしょうか。
 自己と世界が不二であることに気づくというのは、ある種の禅的な結論です。それは当然、ローカルとグローバルという一見矛盾している、あるいは反対のベクトルと思われがちなものの統一にもつながってきます。
 統一場への予感。それは上記四人全てに共通しています。
 藤原くんは、それを音楽というステージで、言葉に乗せて表現します。無理やりのこじつけになってしまうかもしれませんが、彼の言葉を借りれば、「統一場への予感」=「(あるべき)場所への約束」ということになりましょうか。
 この新譜には、今まで以上にそれが明確に表現されているかなと思いました。
 音楽的には特に目新しいことはありません。ある意味安定です。バンプは変わった…とアルバムが出るたびに否定的に言われますが、それは、我々リスナーがついていけてないだけで、表現者にはなんの罪もありません(もちろんその事実を表明するのは自由ですが)。
 何度も書いているように、たとえばビートルズのアルバムごとの変わり様なんかトンデモナイですよ(笑)。ついていけない人続出でした。そして彼らはついて来れないようなチャレンジを繰り返したのです。
 その点、バンプは「変わらない」バンドだと思います。「変わらない」ことへのチャレンジをしているバンドだと思います(私にとっては、シンセの音もミクの声も、なんら不自然に感じません…シングル「ray」についてはこちら参照)。
 その「変わらなさ」は音楽面だけではないと思います。藤原くんの歌詞(詩)の世界も基本的には変わっていません(育っていはいます)。その普遍性こそが彼らの人気の秘密であり、強みです。
 では、その変わらない「自分」と「世界」というのはなんなのか。さらにその先にある「場所」とは…。
 今回のアルバムの歌詞(詩)もそれなりに読み込んでみましたので、具体的に書いてしまうことも可能ですけれども、あまり国語の授業のように(笑)解説的、確定的に語ってしまうと私も皆さんもウンザリしてしまうので、ちょっとだけヒントを書いておきます。
 このアルバムは「眠れなかった」で始まって、「ひとりじゃなかった」で終わるアルバムです。ここにいろいろなことが象徴されていると感じました。
 まず、藤原くんの詩には否定語が多いこと。否定語というか、打ち消しの助動詞「ない」で表現されることが多いのです。ためしに数えてみてください(授業だったらそういうことやるかな)。
 そして、そこにも関わってきますが、皆さんお気づきのとおり「対義語」を並べること、あるいは否定のあとに肯定を持ってくることが多いのも特徴です。
 こういう分析的なことを言うと、それこそ野暮になってきますが、ちょっとそういう視点で歌詞を読み直してみると、新しい発見があるのも事実です。
 否定と肯定を繰り返すことを肯定する。
 これぞ真理であり、その先にあるべき「場所」への「約束」です。唯一の方法がそれなのです。
 わずかで全部であったり、別れても一緒にいたり、変わったり変わらなかったり、壁の中が自由であったり、真っ黒で真っ白だったり…。
 不在と存在、実在と孤独、鏡の中の自分が世界につながる他者であること、これは私の得意分野で言うなら、まさに仏教的な「空即是色」「色即是空」そのものです。
 彼らの音楽の特徴と、ファンの心理の傾向からして、私はバンプを「キリスト教的なバンド」と評した時もありましたが、今では、どちらかというと「仏教的」とでも言いたいくらいです。
 すなわち、藤原くんの若いころの歌詞は「自己否定」することを「肯定」するというスタンスが多かったと思いますが、今では(それなりに年をとって?)「否定と肯定を繰り返すことを肯定する」というように進化した、あるいは根源や本質に近づいた(私はキリスト教は仏教から派生したと真剣に考えています)と感じます。
 そして、その統一的な肯定を続けることが、すなわち人生であり、世界のあり方であり、ある種の悟りへの道であることを、音楽をもって示し続けているのが彼らであると思うのです。
 とかく我々は、現実や日常や常識にとらわれて、あるいは負けて、その活動をやめてしまいます。それが大人になることだとも、たとえば学校で教えられたりするわけですね。
 しかし、そこには「あきらめ(思考停止)」しかなく、「あきらめ(明らめ・発見)」は存在しないのです。
 「RAY」とは、まさに、その「明らめ」の象徴であり、我々が見失ってはいけない光そのものであると思います。
 ドアを開けることに怠慢になってはいけない。その先に約束された「場所」があるはずだ。それは多くの偉人、宗教家が共通して我々に語りかけてきたことです。
 BUMP OF CHICKENの曲を聴くと勇気づけられると感じるのは、そういう次元においてのことでしょう。単なる慰めや共感ではなく、私たちは彼らに背中を押されているのです。
 5月に彼らのライヴに行く予定です。その翌日にはポール・マッカートニーのライヴにも行きます。両者の共通点はなんなのか、そして違いはなんなのか…とても楽しみです。

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