色=空 , 空=色(その3)
今日は我が中学校の卒業式でした。
手前味噌で申し訳ありませんが、本当に素晴らしい式だったと思いますし、卒業していく生徒たちは本当に自慢の子どもたちです。また、在校生も実にしっかりしていました。
卒業式後、謝恩会にも出席させていただきましたが、そこでもまたまた涙涙…。生徒、保護者、教師、みんな号泣でした。
おととい、昨日の話の続きとして語るなら、やっぱり、この涙はとってもきれいな器の中にあったものが溢れてきたに違いありません。
私も保護者もちょうど同じくらいの年代ですが、なんと言いますかね…この年になっても、まだ純粋な器が心の中にあったのかと思うと、ちょっと、いやかなり嬉しいものです。
あるいは日常的には、もうほとんど器も濁ってしまったり割れてしまっていたかもしれません。そこに、子どもたちのおかげで、新しい器が心に作られたのかもしれませんね。ありがたいことです。
卒業式でも謝恩会でも、中学生がみんなで合唱をしてくれました。なんであんなに泣けちゃうでしょうね、中学生の合唱って。
もちろん大人の、あるいはプロの合唱団の素晴らしさも体験的によく知っています。音程や発音はもちろん、歌詞の理解や表現の統一などを窮めてできあがる美しさは格別ですよね。
それはそれで素晴らしい。「コトを窮めてモノに至る」という真理があるからです。大人にとっての「器=空」を磨く方法、技術というのがあるのですね。それはよく分かります。
スポーツの世界なんかでもそうじゃないですか。技術を窮めると、どんどん美しくなっていくし、個性的になっていく。また、ある種の他者性も強くなっていく。
しかし、それは子どもたちの表現は明らかに違うものです。まあ考えてみれば、最初からきれいな器なのですからね。
そういう意味で言えば、生まれたばかりの赤ちゃんは最も美しい器を持っているのかもしれない。しかし、表現という技術は持っていないわけです。
その点、たとえば初音ミクは、圧倒的な技術を持っていながら、圧倒的に「無知」「無私」なわけですよね。そこが面白いし、理想的なあり方、ある種「神」的なあり方であるとも言える。
中学生はまさに、子どもと大人のはざま、いやな言い方をすれば、純粋と不純のはざまで揺れ動いているわけで、だからこそ、その矛盾を高い次元で止揚して見せる(聞かせる)ボカロにハマるんじゃないでしょうかね。
美空ひばりなんかいかにも大人びた歌い手だと思う人もいるかもしれませんが、いやいやどうして、彼女はものすごく子どもっぽいですよ。しかし、神的な技術を持っている。
ひばりさんは、どんな曲でもイントロの間で、完全に「器」を空っぽにできる人なのです。そして、降りてくるままに歌う。
これはある意味では、データをインプットされるボーカロイド状態に近いと言えるかもしれない。
私は全然「神」ではないのですが(当たり前)、ただ演奏家としての理想はそこに置いています。でも努力をしないので、技術が全然そういうレベルにならないし、修行が足りないので、心の面でもダメダメ。特にヴァイオリンはダメなんだよなあ…。八雲琴はけっこういけるような気がしていますが(笑)。
というわけで、今日は中学生の純粋さに触れ、人間というのはまあ因果な生き物だと思いましたし、教育というのは罪深くもあるなと思いましたね。
今日、謝恩会で、「こんなに幸せな時間、社会はもうこれからはないと覚悟しろ。ただ、実際こういう素晴らしい3年間を送ったという事実はあるわけだから、大人になってどんなに汚れた社会に出て行っても、どんなにいやな人間に出会っても、とにかく最後の一人になるまで『いい人』でいなさい」と言わせてもらいました。
もちろん、これは私自身へのメッセージでもあります。「空=器」を磨かねば。
ああ、私も永遠の中二病でいたい…いや、もう充分気持ち悪いくらい中二病だと、中二の娘に言われておりますが(笑)。
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