『オールカラーでわかりやすい! 古事記・日本書記』 多田元 (西東社)
昨日の記事で、「時々情報を整理し、神々の系譜などをおさらいしながら」と書きましたが、その際の資料となるのがこの本です。
私なんか知ったかぶりのハッタリ野郎の代表みたいな人なので、よく「日本の神話にもお詳しくて…」などと言われたりしますが、実のところは、本当に基本的なこともよく分かっていない…というか、覚えていない人なのであります。
いや、いろいろな人に聞くと、どうも日本人は日本の神話、日本の神様が苦手なようです。苦手というのは嫌いとかではなくて、とにかく覚えられない、暗記できないということ。
たしかに、戦後日本の学校ではほとんど神話を教えなくなりましたし、家庭でもそういう話をしない。神社にはよく行くけれど、祭神が何なのかなんてほとんど気にしません。それどころか、お寺と神社の違いもよく分からないで参拝している場合もある(笑)。
私も基本そういう日本人なのです。
しかし一方で、これは困ったことだとは言い切れない部分もあります。そう、これこそワタクシの「国譲り」論につながるのですが、無意識化、無関心化こそが、最高の「保存」方法だったりするわけですね。
意識化、関心化すると、そこには「恣意的解釈」が現れます。それが案外厄介なことになる。戦前戦中の国家神道なんかそのいい例ですよね。
で、最近の私のように、なんだか妙に気になって、あらためて勉強してみようなんて考える人がいて、あえての意識化、関心化するというのはまた違う意味があると思うんです。
ある種の洗脳をされていない中で、能動的に知りたいと思う…実はそれが能動ではなくて本来の受動であるところが面白いところなのですが…ことには、それなりの価値があるのです。
そんな場合、いきなり古事記や日本書紀の原典に当たるのは無茶というもの。正直、現代語訳で読んでもすぐには頭に入らない。いや、私なんかマンガで読みましたけれど、やっぱり神様の名前や系譜を暗記するには至りませんでした。
ちゃんと整理しないといけないんです。しかし、その整理が実に面倒。神様の家系図(?)を作るだけでもけっこう大変。
ほら、普通の歴史を学ぶ時も、教科書だけだと全然イメージ化されなくて覚えられないけれど、資料集を眺めていると不思議と覚えられたりするじゃないですか。
神話の「資料集」として、ようやく満足、納得できるものが出たという感じです。
なにしろ、私、これをコンビニで買いましたからね。コンビニエンスだということです。
そうそう、最近、コンビニに「神様」関係の書籍がたくさんありますよね。コンビニに神様って、実に日本的でよろしいと思います。案外親和性がある。
とにかくこの本、オールカラーというだけでなく、本当にかゆいところに手が届くという感じで、古事記・日本書紀の世界をうまく「資料集」化してくれているのです。
おそらく著者の多田さん自身が、まずは自分のためにまとめた図表なんかがあったのでしょうね。日本人にとっての日本神話、日本の神様の難しさって共通しているわけですから、だからこうして分かりやすさも共有できる。
イラストも主張しすぎていなくて好感が持てます。そう、日本の神様って本来姿形がないわけで、すなわちイメージがなくて、こちらである種の擬人化をしなくてはならないじゃないですか。
その擬人化は、それぞれのセンスでなされるわけですが、たとえばイラストのキャラが濃すぎる(萌え化しちゃうとか)と、逆に多数に受け入れにくくなる。
だから、やっぱり「資料集」レベルのイメージ化、キャラクター化が大切なのです。その点、この本のイラストはちょうどいいと思いました。
資料集ですので、最初から順番に読んでいくもよし、必要なところだけ読むもよし、索引で引いて読むもよし、パッと開いたところを読むもよし。とにかく、一家に一冊、食卓にでも置いておくと何かと便利だと思います。
今までも、こうした種類の神話本はいくつかありましたし、実際私も何冊か持っていますが、この本が圧倒的にしっくり来ました。
安いというのもいいですね。税込み777円でこのボリュームと質感。ぜったいお得です。おススメします。
Amazon オールカラーでわかりやすい! 古事記・日本書記
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