『燃える闘魂』 稲盛和夫 (毎日新聞社)
人間風車ビル・ロビンソンさんがお亡くなりになりました。また一つ「燃える闘魂」のレジェンドの火がこの世から消えてしまいました。
今月末に久しぶりに来日し、トークショーやセミナーなどを開催する予定で、私たち夫婦も参加する予定だったのに、非常に残念です。残念すぎます。
私にとっては、まさに伝説の人、雲の上の人だったわけですが、宮戸優光さんとのご縁で、一昨年の夏、初めてロビンソンさんにお会いする機会がありました。素晴らしいお話をうかがえた上に、背中にサインまでしていただくという、本当に夢のような時間を過ごさせていただきました。
その時の記事がこちらなのですが、そこで書いた「最後の(?)」の言葉が残念ながら本当になってしまいました。
心よりご冥福をお祈りするとともに、私の人生に大きな影響を与えてくださったことに感謝申し上げます。
そんな哀しい日に、この本をちょうど読み終えました。「燃える闘魂」と言えば、ロビンソンさんの良きライバルであり盟友であるアントニオ猪木さん。不思議なシンクロに驚きました。
経営とプロレス、一見全く関係がないようにも思えますが、この本を読めば、ロビンソンさんはまさに稲盛さんのおっしゃる生き方をされたのだと分かるでしょう。
すなわち、「徳に制御された『燃える闘魂』」です。
稲盛さんは、「世のため、人のため」「利他」「知足」という「徳」を基本に据え、「燃える闘魂」をもって経営(仕事)に臨めと言います。
仕事、会社経営も「闘い」であることはたしかです。しかし、ただ他者を蹴落とし自分だけが勝者になれば良いというものではない。
プロレスリングも単純な勝敗論の世界ではありませんね。観客を満足させるために、相手の良いところも引き出さねばなりませんし、説得力のあるストーリー性をも創造しなければなりません。
プロレスは「利己」では成立しないのです。
ロビンソンさんは、プロレスを「フィジカル・チェス」と称しました。肉体で行う頭脳的なゲームということです。物理的な力だけでなく、知識、技術をもって相手の動きをコントロールしていく。
この言葉は、プロレスが単なるスポーツと大きく違って、ある種の芸術性や文化性、あるいは宗教性や教育性を帯びた総合的なモノであることを示しています。
私は、プロレスを世界の縮図のごとく見ているのですが、やはりその中で生き抜いていくためには、「徳」が必要だと感じています。
私もそういう意味で多くの徳ある方々にお会いしてきましたが、そうした方々はある種特別なオーラを発しているものです。
ロビンソンさんは、まさにそうしたオーラをまとった方でした。理屈ではなく、それを体感できたことは、私にとっては本当に幸せなことでした。
稲盛和夫さんについては、最近テレビでインタビューを拝見し、その内容をこちらに紹介しました。そこにも「利己」はマイナス、「利他」はプラスということを書きましたね。
おそらくはロビンソンさんも、フィジカル・チェスで勝利を得るために、稲盛さんのおっしゃる「かけ算」に賛意を表するでしょう。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
考え方がマイナスになってしまっては勝利できない。ピンチこそプラス思考、すなわち「利他」の精神…レスリングで言えば、相手の動きを利用したり、相手の動きをあえて誘ったりすることにもつながるでしょう…で闘う。
人生のあり方、いや、人類のあり方に大きなヒントを与えてくれたビル・ロビンソンさんに改めて感謝いたします。安らかにお眠りください。そして、天国で友人たちとフィジカル・チェスを楽しんで下さい。
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