『新幹線とナショナリズム』 藤井聡 (朝日新書)
私が生まれて1ヶ月半後(1964年10月1日)に開通した東海道新幹線。
言うまでもなくその年、東京五輪が開催されました。当時、私の両親は東京に住んでおりましたが、なんでもその年の夏は、東京が大変な水不足だったそうで、東京では出産もままならぬということか、母は里帰り出産をすることにしました。静岡県の焼津市です。
そして、母は出産後2ヶ月くらい実家にいて東京に帰ったのは新幹線開通後。
そうです。10月5日、私は開通したばかりの東海道新幹線に乗って、東京に帰ってきたのです(とは言っても、もちろん記憶はありませんが…笑)。
それからそろそろ50年。半世紀が経とうとしています。そして、不思議なもので、私は新たなる「新幹線」に関わることになりそうなのです。
その話はあとでするとしまして、その前にこの本、なんとも面白いですよね。内容と出版社の関係が。
著者の藤井さんは言うまでもなく、現安倍政権の内閣官房参与。国土強靭化を唱える方です。
「安倍内閣」「新幹線」「ナショナリズム」…このキーワードが並んでいるのに、出版社が「朝日新聞出版」。意外な取り合わせですよね(笑)。
実際、公共事業や新幹線整備計画を快く書かないマスコミ、ジャーナリズムについての言及がこの本にはあります。
呉越同舟というか、なんとも不思議な感じがしないでもありません。まあ、ある意味、もうそういう二元論的対立の時代は終わっているんでしょうね。
というわけで、この本ではけっこう「ナショナリズム」について肯定的に書かれています。そして、現代のナショナリズムのために、「新幹線」は非常に重要なきっかけになってきたし、これからもなるであろうと。
私は、藤井さんの言う「ナショナリズム」について、たしかに憧れのようなものを感じます。学問的に正しいかどうかは別として、それを一種の「家族主義」に例えられているからです。
2020年の東京五輪に向けて、今、私は自分のできる範囲で協力すべく動き始めています。その中で、特に重視しているのは、オリンピックの持つ「文化」と「教育」の側面です(肝心のスポーツについては専門家にお任せします)。
この本でも、半世紀前に「夢の超特急」を現実化した十河信二さんの「モラールは文化の魂、技術は文化の肉体」という言葉が紹介されています(本書では「魂」が「塊」になっているのですが誤字ですよね)。
次期東京五輪で私たちが示すべきものの一つに「日本の文化性の高さ」があると思っています。
文化の「魂」については、やはり「和」「平和」でしょう。その象徴が「富士山」。東海道新幹線の時も、富士山は日本文化の象徴として、その背景に使われましたが、次回はもっと積極的な意味で活躍してもらいましょう。それについては後日、具体的になったら紹介します。
文化の「肉体」については、これは日本の科学・工業技術ですよね。新たな「新幹線」ということで、リニア中央新幹線に登場願いましょう。
そう、2020年までに東京–山梨間の部分開通を実現したい!そのために…。
おやおや?と思われる方もいらっしゃるでしょうね。なにしろ、私は3年前にはこちらで、リニアモーターカーを「原発以上の愚」「アホプロジェクト」と散々バカにしているのですから。
言い訳はしません。3年の間に私はずいぶん変わりました。原発についても単純に反対ではなく「反対の賛成!」になりましたし、リニアについては、もう始まってしまったのだから反対するのではなく、私のポリシー「批判するヒマがあったら相手を変える」に則って、リニア自体の意味や計画を変えてしまおうと考えるようになりました。
この2年くらいの間に、私は富士山やリニアや五輪に特別な意味を見出す経験をたくさんしました。これは自分で言うのもなんですが「進化」「成長」だと思います。
ま、そんなわけで、今はリニア中央新幹線について部分的に促進派になっているのです。
では、藤井さんの言うように、「新幹線」や「五輪」や「富士山」で「ナショナリズム」を喚起せよ!と言いたいのかというと、微妙に違うんですがね。
「ナショナリズム」という言葉は使いたくないんです。「家族主義」はいいのですが、それを今度は、人類の半世紀の進化の証として、「地球的家族主義」にしたいので。グローバル・ファミリズムとでも言っておきましょうか。
しかし、この本が、そうした私の展望(妄想)に多くのヒントを与えてくれたのは事実です。
藤井内閣官房参与にはそんな感謝の意を伝えるとともに、日本の未来の展望について、ぜひともお話をさせていただきたいですね。
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