色=空 , 空=色(その2)
さあ、昨日の記事の続きです。
「器(うつわ)」とはなんなのか。すなわち「空」とはなんなのか。
「色」は一般的な解釈でいいと思うのです。現象や感覚や思想、つまり言語化される「コト」です。
一方の「空」にワタクシ流の解釈をほどこしていきます。
「空」という字は、見れば分かるとおり「穴」に「工」と書きますね。「穴」はそのまんま「あな」を表します。「工」は「虹」という字から想像されるとおり、湾曲したものを表します。
つまり、私の「空=器」というのはあながち妄説ではないのです。湾曲して穴が空いているものなのですから。
で、なぜ仏教は「空」にこだわるのか。だいいち「空」と「無」はどう違うのか。このへんの説明をしてみましょう。
昨日「色」は「空」という器に盛られた、あるいは注がれたものだと書きました。だから必ず同時に存在していると。
しかし、現実の「器」をイメージすると分かるように、「器」には容量というものがありますし、なんというか質というよなものもあるような気がします。つまり、いい中身にはいい器が、いい器にはいい中身がふさわしいというような。
結局、「色=空」「空=色」なのですから当然と言えば当然ですね。そうすると、まさに同時的にその質を高めていくことが、人間としての修行であるような気がしてきます。
しかし、実はそれが非常に難しい。人間の構造的な問題です。
ここでまた私の「モノ・コト論」が登場します。モノは他者(未認知・不随意)、コトは自己(認知・随意)というやつですね。
「色」はそのまま「コト」ですから、これは意識せずとも意識されています。というか、意識しているからこそ「色」なのです。
問題は「空=器」の方です。私たちは実際の生活の中でも、ついつい中身にばかり意識が行って、それを入れている、あるいは受けている容器の方を無視してしまうきらいがありますね。
これを意識していかねばならない。意識的に器の質を高めることによって、同時に中身の質も上がっていく、あるいは器の容量を増やしたり、場合によっては中身を捨てて空き容量を増やすというようなこともしなければならない。
座禅というのは、「器」を一度きれいにする、空っぽにする、いやそこまで行かなくても、たとえば中身を整理する、ハードディスクのデフラグをするように、空き容量を増やす、そんな技術なのではないでしょうか。
そうすると、そこに新しい「モノ」が注がれるのです。自然と。
たとえば、私が昨日座禅をしていて、ふっとこういう理屈を考えだす…ではなく、思いつく…でもなく、外から与えられたのは、プチ悟り経験なのではないでしょうか。
だから、座禅して「無」になるというのは、ちょっと違うのではないでしょうか。目的は器の中身を無くすことではなくて、空っぽにして別のモノを注ぎ込む…こう書くとまた前後関係、因果関係が生じてしまいますが…のが仏教の求めるものなのではないか。
で、なかなかおとといのBUMPとミクの話になりませんね(笑)。ええと、あの記事にこんなことを書きました。
…たしかに、今までも、美空ひばりと初音ミクの不思議な共通点について書いてきましたけれども、「ものまね(モノを招くという意味での)」の優れた「器」として、二人はたしかに人間のレベルを超えて素晴らしいのです。
だからこそ、不思議と涙が出る(あとは中学生の合唱もそうです)。
そんなミクの「純粋さ」「ひたむきさ」に、藤原くんの音楽、言葉、そしてBUMP OF CHICKENのバンドとしての「純粋さ」「ひたむきさ」がうまく共鳴したのだと思います。
つまり、美空ひばりと初音ミクとBUMPと中学生の共通点があるとすれば、その「器」の純粋さ、質の高さだということです。
モノを招くこそが世阿弥の言った「ものまね」であると、私は真剣に信じています。世阿弥の求めたものもまた、禅のベクトルと重なると思います。
まず私たちは「空=器」を意識化したり無意識化したりする技術を身につける必要があるのか。それが座禅をはじめとする禅の修行であったり、あるいは神道の「鎮魂法」であったりするではないでしょうか。
そうそう、王仁三郎も得意としていた「鎮魂帰神」って、まさに「魂の器をきれいにして、そこに外から他者を招く」という技術ですよね。
どんなものでしょう。また座禅して「モノ」を招いてみたいと思います。
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