『東大現代文で思考力を鍛える』 出口汪 (大和書房)
今年の東大の国語の問題もなかなか面白い良問でした。
特に第一問、藤山直樹さんの『落語の国の精神分析』は読んでいて楽しかった。あまり論理的な文章ではありませんが、自己の分裂(他者性)とその裏側にある統合(虚構の自己)を考えるのに、いい「教材」でした。
とても読みやすい文章なので、皆さんもぜひ今年の問題はこちらからどうぞ。
東大の国語、特に現代文の面白さ…つまり問題を解きながら自分が成長している実感を得られるということ…については、今までも何度もこのブログで書いてきました(あんまり真面目ではありませんが)。
「心より物の時代」(自己より他者)
東京大学入試問題(国語)
東京大学入試問題(国語)より「白」
東京大学入試問題(国語)より「プライバシー」
私は、自分の「モノ・コト論」で読める文章は全ていい問題としてしまう傾向があるのですが(笑)、東大の現代文はまさにそういう意味で良問。毎年、「そうそう」と思いながら読めます。
今年の「他者性」は、ワタクシ流に言うと「モノ」にあたります。モノが統合されてコトとなるのです。しかし、コトはあくまでも虚構であるというのが、私の屁理屈です。
と、そんな自己流、無手勝流ではなく、ちゃんとした論理性と普遍性をもって「東大現代文の素晴らしさ」を語ってくれたのが、カリスマ出口汪先生。
不思議なご縁で、まさに公私ともども、あるいは霊体ともどもお世話になっている出口先生。今回のこの本も、本当にさすがです。
教養を深め、思考力を高めるために東大の現代文は最高の「教材」となりうる。
これはある意味では当然と言えば当然です。私も立場上毎年「出題者」になります。当事者になるとよく分かるんですよね。文章の選択と問題の作成に自分の人生をかける(笑)。
最近は「文章の選択」が面倒くさくて(実際異常に手間がかかる)、自分で「本文」を書いてしまうという荒業をやっちゃってますが、本当は出題者はみんなそうしたいんですよ。間違いなく。ただ、客観性が保たれないのでできない。そこで、自分の身代わりを探すんです。
こういう内容のこういう文章のこの部分をこういうふうに読んでくれる生徒・学生がほしい。
そういうメッセージを出すのが入試問題ですから。
すごく卑近な(現実的な)言い方をすると、「相思相愛の生徒に教えたい」ということなのです。
だから真剣に問題を作る。それを日本のトップ東京大学の先生方がやるわけですから、当然非常にクオリティーが高くなるし、プライドのようなものも発動する。
そして、出口先生が指摘するように、いわゆる東大のイメージを崩すような、「反常識」「反権力」「その他大勢になるな」という、意外に柔軟な、あるいは革新的な(しかしどこか保守的な)メッセージが発せられるのが面白い。
おそらくは、東大の先生方にとって、入試問題というのは、大学での講義や、論文の執筆や、学会での発表と違って、ある意味素の自分を出せる唯一の場であるのかもしれません。
人は、若者(未来)に対しては「理想主義者」になりえます。教育とはそういうものです。その象徴が、この東大現代文なのかもしれません。
そうした「文化」的なレベルまで踏み込んだ出口先生は、やっぱりすごいなと。もちろん単なる予備校の講師の次元ではありません。
今、出口汪先生は、新しい世界の構築のために、自らもまた新しい世界、次元に挑戦されています。身近なところにいると、そういう厖大なエネルギーを感じます。
さすがは、出口王仁三郎の曾孫ですね。これからもご指導よろしくお願い申し上げます。
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