悪口は面と向かって、褒め言葉は人を介して…
朝日新聞に早川義夫さんによる佐久間正英さんへの追悼文が掲載されていました。
お二人の、男同士、音楽家同士の深い愛情を感じさせるいい文章でしたね。
「悪口は面と向かって、褒め言葉は人を介して」
早川さんの感じていた佐久間さんの信条です。
簡単なようで非常に難しいことですね。私もまさにそれを心がけているつもりですが、案外逆になっていることが多かったりして…。
佐久間さんが日本の音楽史に残る数々の業績を残されたのは、きっとこの信条を体現していたからでありましょう。
特にプロデューサーという仕事ではこういう生き方が重要です。信頼を得て、そして相手の能力を引き出すために。
私は常々「学校の先生はティーチャーではなくプロデューサーであるべきだ」と言っていますから、まさに学校においては「悪口は面と向かって、褒め言葉は人を介して」であるべきなんですよね。
「悪口」は、真剣な叱責であることもあるし、冗談めかした笑いの中の悪口であることもあります。いずれにせよ、表情という情報がちゃんと加わらないと真意が伝わらないわけです。
そう考えると褒め言葉というのは面白いもので、なぜか他人を介した方がたしかに効果的だったりする。つまり直接的な表情がそこになくてもいい。
直接的な褒め言葉はおそらく、褒め言葉のふりをしたお世辞だったり、自分がよく思われたいがための嘘だったりすることが多いのでしょうね。
ところが、人を介しての褒め言葉は、そこには「私」が希薄になるので、「真」である可能性が高く感じられるのでしょう。
だから、言われた方もうれしいし、言った方も真意を伝えやすいし、照れもいらない。そして、相手からのお礼や褒め返しなんていう面倒くさいものも排除できます。お互いにいいですよね、たしかに。
気持ち悪い褒め合いほど見苦しいものはありません。だから私、「あっ、この人自分が褒めてもらいたいから私のことを褒めてるな」という人にはあえて褒め返しはしません。やな人ですね、私(笑)。
さてさて、そんな佐久間正英さんと早川義夫さんの共演、そしてこの方も早く癌でお亡くなりになりましたヴァイオリニストのHONZIさんもいらっしゃる素晴らしいライヴです。
音楽も案外「他人を介して」という部分があるんですよ。それが面白かったりする。顔を合わせなくても褒め合える。音を介してということです。それが伝わってくるライヴです。私たちも褒められ、そして怒られ、励まされます。
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