「以和為貴」と「無忤為宗」
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備忘メモ。
今年は個人的に聖徳太子がテーマになりそうです。
さっそく十七条憲法の読み直しを始めました。と言ってもまだ冒頭だけ。
第一条の「以和為貴」はあまりに有名ですが、実はちゃんと意味を理解している人は少ない。このブログでも何度か書いてきたように、私は仲小路彰の説を支持し、ここでの「和」は「にぎ」、すなわち物部氏の崇拝したニギハヤヒに象徴される、縄文以来の「和魂(にぎみたま)」であると考えています。
すなわち、他者を受け入れ、そして受け入れるだけではなく「産霊(むすび)」によって、より高い次元のものを生み出すという精神や行動のことです。
それは、当時、「自他不二」を標榜して流入し流行した仏教とも矛盾しません。よって、第二条で具体的な「和」の実現手段として「三宝に帰依せよ」と言っているわけです。
ところで、その第一条の冒頭、「以和為貴」のあとに何が続いているかご存知ですか。
「以和為貴」があまりに有名なために、その影に隠れてしまっていますが、実は「無忤為宗」という四文字が続いているのです。
パッと見て分かるとおり、これは漢文における「対句」です。つまり、「以和為貴」と「無忤為宗」がペアになっているのです。
対句というのは、どちらか一方、あるいは両方を強調するために用いられる修辞法です。
ここでは、「以」と「無」、「和」と「忤」がそれぞれ対義語として用いられ、「貴」と「宗」が同義語として用いられています。
ちなみに「以」は「もって」と訓まれることから分かるように、「用いる」という動詞と同じだと考えてかまいません。「無」は日本語ですと「なし」と形容詞になりますが、漢文においては、基本目的語をとる「持たない」という意味の動詞と考えることができます。
そうすると、「以和」は「和を用いる」、「無忤」は「忤を持たない」ということになりますね。
「為」は「なす」と訓まれることが多いのですが、基本的にはここでは「=」を表していると考えてよいので、結果として「和を用いる=貴」、「忤を持たない=宗」ということになります。
さらに、先ほど書いたように「貴=宗」(両者とも「とうとし」と訓じられる)なわけですから、全体をまとめると「以和=無忤=貴=宗」ということになるのです。
ここまでの内容を分かりやすく言うなら、「和を用いる、すなわち忤を持たないことはとうといことだ」ということになります。
では、「忤」とはなんなのかというと、これは「受け入れない」という意味の漢字です。器に固くフタをして他者を受け付けないイメージの字なのです。
ですから、「和」はその反対語であって、すなわち「他者を受け入れる」という意味になるわけですね。
これはまさに「ニギミタマ」そのものであります。逆に「忤」は荒魂と言えるかもしれませんね。
聖徳太子は蘇我氏とともに物部氏を滅亡させてしまいました。その虚しさは太子を苦悩させます。そして、たどりついた境地がこの憲法第一条だと私は信じています。
また、これも最近よく使う言葉ですが、物部氏(ニギハヤヒ・縄文)側からすれば、これは一種の「国譲り」であったと思います。戦いに負け、実体が消えることによって、その魂「和」は永遠に残ることになったのです。
このように、「わをもってとうとしとなす」と丸暗記しているだけでは、なかなかその本質には近づけません。
私だったら「にぎをもちいるはとうときなり」「さからうことなきはとうときなり」と訓じますね。
とは言っても、あくまでこれは私の意見であって、なんら学術的な価値はありません。ただ、私にはそのように見えるようになってきたということです。
で、私はそういう直観(ひらめき)をすぐに忘れてしまうので、こうして書き残しておくのです。いつか皆さんの役に立つ日がくるといいのですが…。
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