魔鏡と3Dプリンタ
今日の「三角縁神獣鏡」のニュース、面白かったですね。いろいろな示唆を得ました。
私は三角縁神獣鏡は日本国内で造られたと考えている者です。ですから、今回判明した「魔鏡効果」も日本の職人の研磨技術によるものだと妄想しています。
十字架の映しだされる隠れキリシタンの鏡にも魔鏡効果が使われていたように、日本ではある種宗教的、呪術的、超常現象的にこの匠の技が生かされていました。
おそらくは、卑弥呼の時代以降、神道の鏡の中にこの秘匿技術が継承されてきたのでしょう。
そして今回、これが3Dプリンタによって複製されたというのが面白い。最新の成形技術によって最古の謎の一つが解明されたわけですからね。しかし、実はその最新の技術こそ最古の技術であるとも言えます。
3Dプリンタというのは「堆積」です。鏡面の最終仕上げは手作業だったようですから、まさに堆積と研磨という、自然現象の造形のようなことが行われたわけです。
そう、私は3Dプリンタというものを知った時、これは実に「自然」だなと思いました。
たとえば富士山。このシンプルで複雑な美は、堆積と侵食による造形です。人為の働かない造形というのは、基本的にそういうプロセスを踏んでいます。
まあ、そこに建物を積み上げたり、斜面を削って道を作ったりするのも、「堆積」と「侵食」とも言えますがね。人間の自然の一部ですから。
いずれにせよ、本来の神獣鏡のような鋳型を使った成形から2000年を経て、私たちはまるで神の造形のような技術を手に入れたことになります。
思いどおりの形を堆積によって作り上げる、そして仕上げは研磨となると、本当に神(自然)の領域ですよ。
もう一つ、ワタクシ的には、時間論の中で「堆積」は重要なヒントになっています。つまり重力と時間の関係ですね。そんな点からも、3Dプリンタにはちょっと興味があります。
もちろん、その半面、そのいかにもインスタントな造形に、はたして人間の魂はこもるのかどうか、はなはだ疑問であったり、いや、もともと自然にはそんな意思も魂もないのか、この富士山の造形に意味や価値を与えているのは人間だけではないかとか、そんな迷いも生じています。
まあ、とにかくモノ造りの革命が起きることは間違いないですね。そして、今回のように、過去の造形のコピーもどんどん進み、著作権のみならず今はまだ見えていない様々な問題も形作られていくことでしょう。
まさに、これはモノ(不随意)のコト(随意)化、無常の(記録・複製による)永遠化という人間の営みそのものなのかもしれません。
そう考えると、人間の人生や人類の歴史も時間の「堆積」によって作られ、そしてのちに風化したり、侵食されたり、意図的に削り取られたりして、過去の物語になっていくのでしょうか。そんなことを考えられるのであります。
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