2014 センター試験国語(その1)
いろいろな方からコメントを求められましたので、ちょっと遅くなりましたが書かせていただきます。
う〜ん、今年のセンターの国語はいかんなぁ。昨年は平均点が下がったとはいえ、問題自体はそれほど悪問ではなかった。
もちろん、やたらと時間がかかるので、はたしてそれが「国語」の力を問うものなのか、それとも「情報処理」のスピードを問うものなのか、よく分かりませんでしたが。
今年も問題を印刷してみたら、なんと54枚(問題のページ数は47ページ)。これを80分で読んで解けということですから、まあメチャクチャですね。
半日くらいかければ、なんとか満点取れるでしょうけれど、評論・小説・古文・漢文それぞれ20分でできるわけがない。
できる人(特に高校生)がいたら、それはそれでその人の人生がある意味心配です(笑)。
今年は…我が校の生徒たちもかなり苦戦いたしました。責任を感じます。おそらく全国の平均点は98点くらいになるでしょうね。
まず、その事実を厳粛に受け止めてもらいたい。大学入試センターには。
国語の問題で正答率が50%切るというのは、やはりおかしいですよ。勉強したことが報われないのですから。
センター国語全体に関しては毎年書いているとおりですので、ここでは繰り返しません。こちらから飛んでいろいろ読んでみてください。
まあ、私が毎年ブーブーガミガミ「本当のこと」を言っているおかげで(?)改善された部分もありますよ。
たとえば、2011年の記事で「短編全文出せ!」と書いたところ、翌年から今年まで3年連続「短編全文」が出題されました。当然です。おかげでだいぶ解きやすかったのではないでしょうか、今年も。
今年の現代文、すなわち評論と小説は、特に大きなプロブレムのない問題でしたし、実際生徒たちもそこそこの点数を取れていました。まあ、良問の類に入るでしょう。私も文句は言いません。
しかし、う〜ん、今年の古典、つまり古文と漢文はどうもいかんなあ。なんの力を問う問題なのか、高校生に高校3年間何を勉強しなさいと言っているのか、そういうメッセージがよく分からない問題でした。
まず、古文。源氏物語が出ちゃいました。もうその時点で「う〜ん」です。
私は自分で源氏物語の「無手勝流現代語訳」をやっていたりして、まあ、世間の方々、特に高校生に比べればずいぶん源氏に親しんでいる方だと思います。それでも…。
正直に言います。私は本文を読まないで解きました。で、50点中34点。問4まではあとで述べる知識とテクニックで正解し、問5と問6はテキトーにマークしたら間違っていた(苦笑)。
それでも解答にかかった時間は10分弱。余った時間を、時間をかければ必ず正答できる現代文に回せたので、作戦としては、あくまで作戦としてはですが、成功だと思います。
はっきり言っちゃいますが、私は「江戸時代以外の作品(たとえば平安時代の物語)」が出たら、本文読まない作戦で行くことにしています。で、7分くらいで半分の点をキープして、あとで時間が余ったら本文を読んで加点を企てます。
江戸時代の版本はまさにパブリッシュされたものであって、不特定多数の読者を想定した文章なので、まあ現代人の読者感覚で構わないのですが、たとえば平安は、宮中の女房というまあ千年前の超特殊な世界の住人を対象とした文ですからね。背景常識も理解し難いですし、文も主語の省略などが多くなる。LINEの平安宮中女房グループの中での会話ですからね(笑)。それを今の高校生に理解せよというのは無理というものです。
長年源氏物語とつきあってきた、それもあえて既存の現代語訳を読まずにゼロから読んで訳してきた者として、本当にそのように感じます。
では、本文を読まないでどうやって34点取るかというと、これは本当に単語と文法という知識だけです。参考になるかもしれないので書きたいのですが、ちょっと長くなりそうなので、詳細は明日の記事で。
一方、今年の漢文ですが、これはかなり難しかった。文章自体はそれほど難しい内容ではなかったけれども、問いはいやらしい、素直でない、ちょっとイジメが入った(?)問題でしたね。
いつもの調子で解くとひっかかる問題がいくつかありました。特に三問も出題された白文書き下し系の問題。
いわゆる常識的な訓みをすると間違った選択肢に誘導されてしまう。それで時間を食ってしまいました。絞った選択肢の中に正解がないのです。で、最初からやり直し。
これは誰も指摘していませんが、第1問評論で語られる日本人にとっての「漢文論」とは正反対の問題でしたね。つまり、今まで意味よりも素読(訓み癖やリズム、そして空気)が重視されてきたのに、今回の漢文の問題は、意味的に微に入り細に入らなければならないものでした。
はたしてこれからの日本人は、どういう漢文的知識を要求されているのでしょう。
このセンター試験の中でも矛盾してしまっているというのは、なんとも皮肉なことですし、受験生というか、今の日本の若者にとっては、非常に不幸なことになっていたと思います。残念です。
実際の問題はこちら
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- 太陽の活動と地球の天変地異(2022.06.21)
- ピンク・レディー 『Pink Lady in USA』(2022.06.15)
- 武藤敬司選手引退へ(2022.06.12)
- 時代の試練に耐える音楽を〜山下達郎(2022.06.11)
- 倍速視聴と音楽と…(2022.06.10)
「教育」カテゴリの記事
- 人間の知性について 〜ひとくくりにできない才能と広がる未来への可能性〜 (COTEN RADIO)(2022.06.30)
- 『キー・コンピテンシーとPISA』 福田誠治 (東信堂)(2022.06.26)
- 『まったく新しい柔道の寝技の教科書』 矢嵜雄大 (ベースボール・マガジン社)(2022.06.20)
- 『くちびるに歌を』 三木孝浩監督作品(2022.06.09)
- 岡田斗司夫の頭が良くなる教育論~東京学芸大学講演(2022.05.31)
「文学・言語」カテゴリの記事
- 《大勉強 by PHAETON 》Issue 4 死生ってる?(2022.06.17)
- 天才と富士吉田(2022.06.13)
- 倍速視聴と音楽と…(2022.06.10)
- スタン・ハンセン vs アンドレ・ザ・ジャイアント(1981 田園コロシアム)(2022.06.03)
- 夢枕獏(作家)×竹倉史人(人類学者)対談(2022.06.02)
コメント