2014 センター試験国語(その3…古文問2・3・4)
受験に関係ない人にはどうでもいい記事が続いてしまい申し訳ありません。昨日の続きです。センター試験の古文について。
とりあえず問1で15点ゲットしました。知識だけで解答し、本文の読解は必要ありませんでした。ちなみに私の教え方ですと、このような解答法のための文法、語彙の知識はじっくりやっても2ヶ月ほどで完璧にすることができます。知識だけは。もちろん運用には訓練が必要です。
さて、今日は問2以降を見ていきます。
問2は毎年純粋な文法問題が出ます。これこそ本文の読解は必要ありません。基本的な文法知識だけで充分です。
a「なめり」の「な」は「限り」という名詞を受けているので明らかに断定ですから、1、3、5。
bの「驚かれ給うて」の「れ」は、心情語の「驚く」についているので典型的な自発。おせっかいかもしれませんが、この「れ」は受身と自発で迷わせるより、尊敬を混ぜた方がより難しくなったのでは(ま、「れ給ふ」の「れ」が尊敬という可能性はゼロなのですが…笑)。
c「のたまひはてば」の「て」は、これは変なところに傍線を引きましたね。深く考えなければ「のたまふ+はつ」で、すぐに動詞の活用語尾だと分かりますが、あまりに意外なところに傍線があるので、逆に迷ってしまうかもしれません。
d「知らせ奉り給ふ」の「せ」も簡単ですね。尊敬だったら「知り奉らせ給ふ」になります。
よって5が正解です。問2も5点ですので、これで20点になりました。最悪これでもよしとしますが、時間をかけなくてよいなら、もう少し取っておきたいですよね。
ということで、問3に行きましょう。問2まではまさに知識問題で本文の文脈など関係なく解くことができました。問3以降はそうはいかないと皆さん思っていますが、どうでしょう。
問3 傍線部X「『心苦し』と思す」とあるが、誰が、どのように思っているのか。その説明として最も適当なものを、次の1〜5のうちから一つ選べ。
こういう問題です。普通に考えて、これはちゃんと本文を読み込まないとできない問題ですよね。しかし、これもまたほとんど本文を見ずに正解できます。
まず、この問題で重要なのは「誰が」と「どのように」ですよね。傍線部には「誰が」は示されていませんが、「どのように」は書いてあります。すなわち「心苦し」。
あくまでも、この「心苦し」からはずれた「飛訳」はダメです。「心苦し」も重要単語。「相手の様子を見ていて心が痛む」が基本的な意味です。一般的な訳として「気の毒だ」「切ない」と覚えています。
まず、少なくとも現代語の「心苦しい」とは違うからこそ問題になっていると考えて良いので、つまり、選択肢2の「すまないことをした」は今風なので✕になりそうな予感。
ほかも含めて「どのように」の部分を見てみましょう。
1愚かなことをした(と思っている)
2すまないことをした(と思っている)
3心を痛め、かわいそうだ(と思っている)
4ひどい(と思っている)
5気の毒だ(と思っている)
この中で、一般的な暗記事項と合うのは、3と5ですね。さっき書いたように2は相手に対して気がとがめるという現代的(近代的)な意味ですし、1も相手に対して自分の行為を反省する感じですから、あやしいですね。
4は相手の行為に対して腹が立っているのでこれもダメっぽい。私はもうこの時点で3と5に絞って検証することに決めました。
で、ここで初めて本文をちょっと見ます。というのは、どんな相手の何を見て「切ない」のか知らないと「心苦し」の解釈は無理だからです(しかし、全文読む必要は全くありません)。
で、本文の傍線部Xのところを見ますと、すぐ上に「〜を」とあります。つまり「〜を、『心苦し』と思す」となっている。これは非常にラッキーですよね。なぜなら、その何に対してというものが、「を」の上に書かれているに違いないからです。
そこですぐ上を少しさかのぼりながら見てみると、「姫君たち、さてはいと幼きとをぞ率ておはしにける、見つけて喜び睦れ、あるは上を恋ひ奉りて愁へ泣き給ふを」とあります。これはなんとなく訳せそうです。
実はこの訳がそのまま選択肢3にあるんですよね。「…我が子の、父の姿を見つけて喜んだり母を求めて泣いたりする様子に(心を痛め、かわいそうだと思っている)」。
もうこれしかありません。主語はどうでもいいレベルです。いちおう見てみると、傍線部を含む4行にわたる長文の軸になるのは「大将殿も聞き給ひて…と驚かれ給うて、…と思す」という主語述語の関係でできていることが分かりますから矛盾はありません。ちなみに「て」でつながっていて新たな主語が提示されない時は、最初の主語が変わっていないことを示していると考えてよい(源氏なんかそういう読み方をしないとすぐに主語迷子になる)。
そんなわけで正解は3です。問3にかけた時間は3分くらいです。問3は7点ですので、ここで27点ゲット。もうここで終わってもいいと生徒たちには教えてあります。古文は読まないで半分以上取れればラッキー。時間が余ったらちゃんと本文読んで後半の問題も解けと。
しかし、ここでいちおう問4を見ましたら、「心情」を問う問題だったので、これも行けそうな気がしました。なぜなら、「心情」は単語にしっかり現れるからです。
問4 傍線部Y「もの懲りしぬべうおぼえ給ふ」とあるが、このときの大将殿の心情の説明として最も適切なものを、次の1〜5のうちから一つ選べ。
うん、これは行けそうだ。なぜなら、私の得意な「もの」と「ぬべう(ぬべく)」があるからです。そこかよ、という声が聞こえそうですが。ま、私の専門ですので(笑)。
「もの」は不随意を表す語です。なんとなく思いどおりにいかないのだなと分かります。思いどおりにいかないことに「懲りる」のだろうと想像します。
それから「ぬべう」ですが、これは一般的というか受験用には「ぬ」が強意とか確述とかいって、「ぬべし」で「きっと〜だろう」と教えることが多いのですが、私は生徒たちに違うと言っています。
これはあくまでも「未来完了」です。完了の助動詞に未来(推量)の助動詞がついているのですから。これは、「未来のある時点であることが完了、成就しているだろうと予想できるくらい今その兆候がある、あるいはその気である」ということを表すと、私は考えています。
その感じがしっかり訳しこまれていないと、出題者にクレームつけちゃいます。で、結論から言ってしまうと、選択肢2の文末だけが「嫌気がさしかけている」という訳で、あとは「思っている」「反省している」「苦悩している」「望んでいる」と、普通の現在進行形のような訳になっているんですね。
「もの〜ぬべう」はあくまでも「なんとなく不本意にも〜しそうな予感がする」という感じなのです。それをまあうまく表現したのが「〜しかけている」という部分でしょう。だからもう正解は2と決めました(違ったら文句言ってやる!と思ってましたw)。
ついでに本文もちょっと見ると、傍線部のすぐ上が「『いかなる人、かうやうなること、をかしうおぼゆらん』など」となっていますから、選択肢2の「〜を楽しいと思っている人間の気が知れないと」と整合性があります(ちっともストーリー分かってませんがね)。
というわけで、問4も正解でこれも7点。合計で34点ということです。所要時間7分弱。
欲を出して問5と6も見てみましたが、これは本文をかなり読み込む必要があるので、テキトーにマークしました。結果として両方✕(笑)。当たればラッキーのロト6状態でしたが、ハズレ。まあ当然と言えば当然なのでショックでもなんでもありません。
ちなみに今回は余った時間を漢文に費やさねばならなかったので、結局本文は読まずじまい。実は今でもどんなシーンなのか分かっていません。しかし、それでも、34点はある程度の自信をもってゲットすることができました。
と、こんな感じなのですが…書いていて、やっぱり虚しさを感じますねえ。実はこれをそのまま生徒に要求してもなかなかできないんですよ。経験による勘、特にどこを見ればいいのかというセンスはなかなか共有できません。
いずれにせよ、今年のセンター古文はまじめに時間をかけて取り組んだ方が点が取れなかったかもしれないという、決して良問とは言えない内容でした。
そういう事実を、もっともっと多くの高校の先生、あるいは予備校の先生たちが糾弾しなければ。
先生は妙なプライドがあって、まともな正面突破で解けたかのように解説しがちです。本当に20分で本文を読みきって、意味がとれて、解答しているのでしょうか。はなはだ疑わしい。
私は無理なものは無理と言います。こういう記事を書くと必ず、バカ呼ばわりしてくる頭のいい方々がいるものですが、それはあなたが立派すぎるのですよ。生徒や先生一般はやはり被害者だと思います。
さっそく、センターに意見をしたいと思います。なんとか来年以降改善されますように。試験内容だけでなく古文学習の現場も、いろいろとね。
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