『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』 小津安二郎監督作品
今日は小津安二郎の生誕110年、そして没後50年の日。
そう、小津はちょうど暦の還る60歳の誕生日にその人生の幕を閉じました。さすが天才は違うなあ。
そんな天才の映画人生を偲んで、今日のGoogleのトップ画像は「東京物語」のあのシーンでしたね。
私は久しぶりに「生れてはみたけれど」を観ました。高校生にはよく教材として見せていた作品です。最近は中学生と高校生の受験指導が主なので、ちょっとご無沙汰でした。
まあ、今は便利な時代でして、こうしてYouTubeに稀少フィルムも含めてたくさんの小津作品が公開されています。
言うまでもなく、「生れてはみたけれど」は代表的な戦前の作品の一つ。昭和7年、近代化する東京郊外の一家族の風景でありますが、今見ても面白いだけでなく、家族の変容、父権の失墜、会社組織のあり方など、現代日本を予言したような内容でもあります(小津の作品はそういう評価が可能なものが多い)。
この作品で私が特に印象的なのは、前半の明るさと後半の暗さのコントラストですね。バロック的です。
私は同様の印象を、ロベルト・ベニーニの名作「ライフ・イズ・ビューティフル」にも感じました。ベニーニは小津のこの作品に影響を受けたのではないでしょうか。
前半のくだらないとも言える明るさ軽さのおかげで、後半のシリアスなテーマ性が浮き彫りにされるということですね。
当然「生れてはみたけれど」はサイレント映画です。サイレント映画の見方はいろいろありますね。授業では弁士ヴァージョンを観せていました。現代の子どもたちには、やはり音声がないのは厳しいようです。ある種のスーパー(テロップ)はありますが、フォントがオシャレすぎて(笑)、読みきれないようですね。
今日は、ドナルド・ソシンの見事な即興ピアノによるサウンドトラックヴァージョンでご覧いただきましょう。これはこれでいいですね〜。
ちなみに劇中、異様に頻繁に行き来する電車は池上線だそうです。まあ蒲田映画全盛期ですからね。
池上線は、雪が谷大塚に住んでいた私も昭和の時代によく乗っていた電車です。昭和7年当時には既に蒲田、五反田間が全通していました。さらには、雪が谷大塚から奥沢に向けて今はなき支線も走っていたんですね。当時の東京郊外(当時の郊外)の開発ラッシュが目に浮かびます。
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