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2013.12.05

『江戸の金山奉行 大久保長安の謎』 川上隆志 (現代書館)

4768456693 年、こちらという記事でちょっと紹介した大久保長安およびこの本。
 あれから早速注文して読んでいたのですが、なぜか記事にはしませんでした。私の直観が「あとで」と言っていたのです。
 そして、今日その時が来ました。
 いろいろときっかけがあったのです。
 一つは、甲斐の国の「秦氏」が動き始めているということ。大久保長安は秦氏の末裔です。
 そして、その秦氏が深く関わっている「能」と「織物」と「山」、そして「アジア」もまた、ここ富士北麓で動き始めているということです。
 その最初の集大成というか、集大成の始まりが来週体現されます。今はまだ特定秘密(!)なので、その行事が終わったら報告します。
 もう一つ、おとといある方からメールをいただきまして、そのテーマが大久保長安だったです。
 その方と私は直接面識はありませんが、カミさんが今年富士北麓で行われた国際コモンズ学会で知り合いになっていました。
 そのメールで紹介されていたのは、大久保長安と八王子の治水についてのワークショップでした。大変興味深い内容なので、皆さんもこちらでご覧ください。
 このワークショップの中心になったのは「大久保長安の会」。この会の話もこの本に出ています。
 そんなこんなで、もう一度この本を引っ張り出してきて再読してみたというわけです。
 やはりタイミングは大事ですね。前回読んだ時は、あまり気にならなかったところが、急に面白く感じられて驚きました。今年はちょうど没後400年だし。
 この本の特徴は、長安の先祖である秦氏の源流を朝鮮半島に求めていることです。もちろん、ある意味それが一般的な説であるとも言えます。
 ちなみに甲斐の国富士北麓の秦氏、たとえば「羽田氏」などは、秦の時代の徐福を祖先としています。しかし、様々な風習などはどちらかというと朝鮮半島に近い感じがする。まあ、当時は中国も朝鮮も日本から見れば一つの「外国」だったのかもしれませんし、実際地続きの大陸と半島とは深いつながりがありましたからね。半島は大陸の属国だった時代が長いし。
 実際、日本に渡ってきた秦氏は百済の弓月氏と言われていますが、彼らは自らを秦の始皇帝の末裔と名乗っていました。そういうスケールで言えば、大陸、半島の区別は意味がないと言えるでしょう。
 それにしても、本当に「謎」の多い人物ですね。去年書いた記事の「謎」の部分を引用してみます。ちょっと長いけれども、もう一度自分でも復習してみたい。

 大久保長安は猿楽師でもありました。金春流の能を舞っていたということです。秦氏の末裔とも言われる長安は、芸能者であり、かつ非常に優秀な鉱山技師(山師)でもありました。
 全国を行脚する芸能者が裏社会のネットワークの一員であることは決して珍しくありませんよね。彼もそのような人間であったと予感されます。
 彼の死後、家康が異常なまでの憎悪を抱き、なかば腐敗した長安の遺体を掘り出させ、お膝元の安倍川でさらし首にしました。子息七人にも切腹を命じ、完全に血統を断絶させるという、なんとも異常なほどの行動に出ています。
 これは「大久保長安事件」として一般に言われているようなスキャンダルではなく、おそらくはその裏にある「霊力」を恐れてのことではないか推測されます。
 かつては武田氏が、そして当の家康が、それこそ異常なほどに重用したのにも関わらず、死後そこまで恐れられるということに、私は妙に関心がわきます。ちょっと私なりに調べてみようと思います。
 大久保長安と言えば、甲斐の黒川金山開発も有名ですよね。黒川金山と言えば、今回の企画展では全く触れられていませでしたが、「おいらん淵」のことを思い出します。
 今では心霊スポットとして名高い「おいらん淵」…私も大学時代、天文部の観測会で一之瀬高橋に向かう途中偶然真夜中に立ち寄ってしまい、恐ろしい体験をしています。
 実際にあそこで多数の女郎を殺害したかどうかは、学問的には証明できていませんが、それほど恐ろしい伝説が残ることの裏には、大久保長安の霊力と怨念が関係していると感じます。あんまりそういう視点で語る人いませんよね。久しぶりに行ってみようかな…いや、怖いからやめとこ。
 大久保長安は「浅間神社」を信奉していたようですね。彼が発展させたと言っていい東京の八王子には、彼が作った浅間神社や富士塚が残っています。
 それから、いわゆる大久保長安の埋蔵金。箱根に眠っているとか。ネットで調べると、なんだかそれについて出口王仁三郎も太鼓判を押しているようです。知らなかった。
 というわけで、秦氏、能、金山、霊力、浅間神社、富士山、出口王仁三郎と、私のアンテナに引っかかりまくりの大久保長安なのでありました。(引用終わり)

 今回新たに思いついたのは、「織物」についてです。八王子は織物の街ですよね。八王子の織物文化も大久保長安が持ち来たったに違いありません。やはり「秦氏」の臭いがプンプンします。
 さらにこの本で興味深かったのが、「長安キリシタン説」です。なぜか甲斐で斬首され葬られたキリシタン大名有馬晴信との関係も謎すぎます。
 私のみならず、こうした「謎」の人物にロマンを感じた人も多いようで、この本には長安をモデルに書かれた小説などの紹介もあります。村松梢風から松本清張、山田風太郎、隆慶一郎、半村良、荒俣宏などなど、これまたそうそうたる作家陣が並んでいますね。読んでみたくなりました。
 私が名づけた「web0.0」というプリミティブなネットワーク。それを、戦国末期から江戸初期にかけて復活させ、ある意味国家を裏から操った大久保長安。
 もしかすると、長安は現代に甦りつつあるのかもしれません。ちょっとそんな気がしています。

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