「へこたれる」とは
先日「チョップ(手刀)の神秘」の記事で触れた、力道山没50年追悼記念興行『プロレスの力』がサムライで放送されていたので観戦いたしました。
デビュー戦を親子タッグで勝利した「力(ちから)」選手が、試合後のインタビューで「へこたれることなく…」という言葉を使っていました。
なんかプロレスで「へこたれる」という古典的な言葉を聞くのは久しぶりのような気がして、逆に新鮮でありました。
へこたれる…皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか。
力選手は、一般の辞書の冒頭にある「つらくて中途でくじける。だめだと思って元気をなくす。まいって途中でほうりだす。へたばる」という意味で使ったのでしょうね。
プロレスはまさに「へこたれない」姿、心を表現する文化です。特に日本のプロレス文化は。
「へこたれる」は「へこ」と「たれる」に分かれます。そう、無理やり漢字で書くなら「凹垂れる」なのです。
つまり「凹む」と「垂れる」の組み合わさった言葉なのです。たしかにそういうイメージありますよね。
語誌的に言いますと、この言葉はそんなに古い言葉ではありません。江戸時代に使われ始めたと思われます。
古い用法を見ると、「座る」「くたびれて腰を下ろす」という意味で使われています。「マア下にへこたれなさろ」のように。
それが明治になって、比喩的に心理状況を表すようになりました。「心が折れる」というような意味ですね。
ところで、「へこむ」という言葉ですが、その「へこむ」ことを表す擬音語(擬態語)として、「ペコっと」とか、「ペコペコ」とか言いますよね。
そう、日本語の「はひふへほ」は上古は「pa pi pu pe po」と発音されていたと考えられているんです。だから、「へこむ」は「ペコム」と発音されていたのです。オノマトペとしては古い形が残ったわけですね。
同様の現象としては、「ひよこ」と「ピヨピヨ」の関係が思い出されます。古くは「ピヨコ」だったわけですね。
おならの「屁(へ)」や排泄を表す「ひる」なども「ペ」「ピ」という音から生まれた言葉かもしれません。
じゃあ「母(はは)」は?そうなんです。古代にはお母さんは「パパ」だったわけです(笑)。面白いですね。
おっと話が逸れました。
「へこたれる」は「凹垂れる」。たしかに凹んで垂れちゃうというのは最悪な状況ですね。私も「へこたれることなく」頑張りたいと思います。
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