「輪」と「和」
今年の漢字は「輪」ですか。
漢検協会を敵に回している(いた)ワタクシとしては、あんまり興味を持ちたくないネタであるはずですけど、なんだかんだ気になっていました。
やはり基本は東京五輪の「輪」ということでしょうね。そして、日本中が輪になって盛り上がった、支援の輪も広がったとのこと。
「輪」は音読みでは「リン」、訓読みでは「わ」ということになります。
「wa」の音から、輪と和をひっかけて語っているのを見かけますが、「輪」の「わ」は訓読み、「和」の「ワ」は音読みです。
しかし、全然関係ないかというと、そうでもありません。昔の日本人もこの二つの漢字には関連性を感じていました。
「輪」という漢字が輸入された時、それは日本語(和語)でいうところの「wa」であるということが分かった。そこで中国の読みとは別に「wa」と訓むようになったわけですね。
それとは別に「wa」という音を表すのに万葉仮名ではどんな漢字を使ったかというと、主に「和」を使ったわけです。そこから平仮名の「わ」、片仮名の「ワ」が生まれたことはご存知でしょう。
すでにそこに「輪=和」という関係が成り立っていることになりますね。
ちなみに和名類聚抄という平安中期の辞書にも「輪=和」と記されています。
実は、その後、「wa」音を表す万葉仮名にも「輪」が登場してきます。普通万葉仮名は当時の中国語の音、すなわち漢字の音読みを借りて日本語の音韻を表すものなのです(夜露死苦のように…ん?「夜」は訓読みか…笑)。「wa」に「輪」を使うというのは、すなわち「輪」の訓読みを使っているということになり、ちょっと珍しい例となります(借訓仮名と言います)。
それから、やはり意味の重なりにも注目しなければなりませんね。
たとえば、「人の輪」というのと「人の和」というのと、なんとなく似たイメージがありませんか。手をつないでいる様子がなんとなく和やかさを象徴しているというか。
「和の精神」は「輪の精神」であるとも言えるわけですから、今年の漢字はなかなか良いものが選ばれたと思います。
私としてはもう一つ、「輪」が花を数える助数詞になっているということも忘れてはいけないと思います。
花を「輪(わ)」と捉える感覚、これはいいですねえ。中国ではそういう数え方をしないようですから、日本のオリジナルなのでしょうか。
つまり、五輪はオリンピックである以前に、花が五つ咲いているという意味になるのでした。
あっ、あと「輪」と「和」というと、花輪和一を思い出すな(笑)。
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