チョップ(手刀)の神秘
昨日は力道山没後50年の日でした。そして今日、力道山の孫である「力(ちから)」がプロレスデビューしました。力は全日本、ノアで活躍した百田光雄さんの息子さん。実に三代にわたってプロレスラーを継いだことになります。
力道山については、没後半世紀過ぎても、その評価は難しい。生前から毀誉褒貶相半ばする人物でしたからね。
しかし、実際戦後日本の精神的復興に大きく寄与したのは事実であり、日本史上に名を残す巨大な存在であることには変わりありません。
今日の力のデビュー戦では、祖父ゆずりのチョップも見られたとのこと。力道山と言えば空手チョップでしたからね。ルー・テーズ戦の空手チョップを見てみましょうか。
チョップというのは、実にプロレス的な技です。プロレスでは基本パンチが禁止されているため、手による打撃技は自然チョップになります。
もともとチョップ(手刀)は日本の武術のみならず、世界の格闘技の中にも存在していました。拳によるパンチは破壊力が大きく、すなわち、相手にダメージを与えることもできる代わりに、自分の拳をも傷める可能性が高い技です。
そこで、手刀を相手の急所に入れることによって自らを守りつつ相手にダメージを与える方法が進歩しました。
プロレスでは、急所を狙うこともありますが、一つの儀式(挨拶)として逆に相手の鍛えている所、たとえば胸板を狙って打つこともよくあります。
プロレスは単純な勝ち負けの競技ではなく、お互いの良さ強さを引き出し合いながら協奏していく特殊な文化です。つまり、チョップを打たれる方も鍛え上げた肉体と精神を表現することができるのです。
有名なチョップ合戦を見てみましょうか。これは興奮しましたね。涙が出ました。小橋建太vs佐々木健介の伝説的名勝負です。
飛び技、大技連発のプロレスが横行し、またパンチが主流の総合格闘技全盛の時代によくぞやってくれました。東京ドームに響き渡るチョップの音。高山選手が解説で「祭」と言った意味がよくわかりますね。プロレスは神事なのでした。
さてさて、総合でもチョップが繰り出されたことがありますね。それもモンゴリアン・チョップ。もちろん使い手はプロレスラー桜庭和志です。これまた伝説のホイス・グレイシー戦。1時間16分40秒あたりから見てください。しっかし、プロレス以上にタフな試合でしたね、これ。
というわけで、プロレスにおけるチョップを見てきましたが、「手刀」の持つ神秘性、宗教性がお分かりになりましたでしょうか。あくまで「刀」なんですよね。
ちなみに大相撲で懸賞をもらう際に「手刀を切る」動作をしますよね。左、右、中と。これは日本神話の造化三神に対する敬意を表しています。すなわち、中は天御中主神、右は高皇産巣霊神、左は神皇産巣霊神です。
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