『プア充 −高収入は、要らない−』 島田裕巳 (早川書房)
宗教学者の島田裕巳さんによる本。
たしかにこれは宗教書ですね。特に仏教の教えに近い。
お釈迦様は財産と子どもにこだわるなと繰り返し説いています。まったくそのとおりで、昔も今も、私たちはお金と自分の子どもにとらわれて振り回されています。
お釈迦様ファンである私も、とにかくその二つの「宝」にこだわりを持たないように努力しているつもりです。
そうすると、たしかにいろいろな悩みや煩悩がなくなって楽に生きられますし、小さな欲望は叶わなくとも、なんだか望外なことが叶ったりする。これぞ智慧(般若)なのでしょうね。
ということで、この本はとりあえず二つの煩悩の素の一つたる「カネ」にこだわらないで楽に生きようという内容の本です。
先ほど述べたようにプチ修行生活をしている私としては、非常に共感できる内容でした。
もちろん、今の私は、ここで言われているような若者ではありませんし、ここでベストインカムとされている金額より多少は多くの収入がありますが、基本としては、お金にしがみつくことは全くないので、島田さんが言うように幸せな生活を送れています。
あっ、それから、昨日の話にも通じるところがありましたよ。昨日、「祭は非日常」であって毎日やっていてはダメということを書きましたよね。
この本の第三章は「毎日がハレではつまらない」です。同じことですよね。毎日ゴージャスじゃつまらないのです。
プアだと、そういう意味で「祭」を体験できる。たしかにそうだと思います。1年に1回、数年に1回のぜいたくが至高の幸せになる。
ということは、やはりこの本は神道的であるとも言えますね。やっぱり宗教と関係してくる。
いや、考えてみれば、宗教というのはどの宗派も究極的な幸福というものを目指すわけで、最終的には同じようなことを言うことになりますし、実はどの宗教も近代化の中でどのように進化したかというと、結局「お金(財産)」とどう付き合うかを諭す内容になってきたわけです。
おそらく原始宗教は、人間の本能との闘いの中から生まれてきたものでしょう。そこに「貨幣」という悪魔的イコンが加わって、その闘いはさらに厳しく激しいものになった。
違う言い方をするなら、旧来の宗教が「貨幣教」に侵食されたわけですよね。
ところが、最近、どうも貨幣教では幸せになれないということが分かってきた。と言いますか、お金は自分をある領域に関しては幸福にすることはできるけれども、それが他人の幸せ、地球の幸せにつながるかというと、どうもそうではないということに、人類は気づき始めたわけでね。
私の仏教に対する根本解釈は「自分が幸せになる方法は一つしかない。それは他人を幸せにすることだ」なのですが、それがなんとなく分かってきた人たちが増えている。特に日本では。
以前、「成長→成熟」という記事を書きました。そこにもあるように、私たち日本は成熟の時を迎えているように感じます。
安倍政権が取り組む成長戦略に関して、私がなんとなく「古臭い」感じを受けるのは、たぶんそういう理由だと思います。
なんとなく、いい年した大人が成長を追い求め続けるのはカッコ悪いような気がするわけです。
それこそなんとなくでもいいのです、私の言うことに「そうなのかもなあ」と思う方は、ぜひこの本を読んでみてください。
人間関係こそが財産、その人間関係は人に迷惑をかけることによって生まれる…などなど、私が生徒たちに言い続けてきたことが書いてあります。
全体がドラマ仕立てになっていて、とっても読みやすく、理解しやすい本となっていますよ。
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コメント
こちらでは初めてコメントさせて頂きます。
今年7月に不二草子さま宛てにメールでお送りしました件について
その後進展がございましたので、
niftyのメールアドレス宛てにご報告をお送りさせて頂きました。
よろしくお願い致します。
投稿: henocchi | 2013.11.12 18:10