『そうだったのか!アメリカ』 池上彰 (集英社文庫)
オバマ大統領に変化が見られます。すなわち、アメリカという国の「生き方」が変わりつつあるように見えます。
何がどう変わったのか、そして、これからどう変わっていく可能性があるのか。それを知るために、まずは今までのアメリカを復習しようと思い、この本を読みました。
非常に分かりやすく、よくまとまった入門本であると思います。目次を見てみましょう。
第1章 アメリカは宗教国家だ
第2章 アメリカは連合国家だ
第3章 アメリカは「帝国主義」国家だ
第4章 アメリカは「銃を持つ自由の国」だ
第5章 裁判から見えるアメリカ
第6章 アメリカは「移民の国」だ
第7章 アメリカは差別と戦ってきた
第8章 アメリカは世界経済を支配してきた
第9章 アメリカはメディアの大国だ
オバマ以降のアメリカ
どの章もたしかに「アメリカだなあ」と思わせますよね。
それぞれについて、歴史的な事実をしっかり復習させていただき、今までのイメージがちゃんとした知識になった感じがしました。
しかし、その結果、そのイメージの全体像、すなわち「私の中のアメリカ」が大きく変わったかというと、ほとんど変わりませんでした。
やはり一口にアメリカと言っても、たとえば日本ほどの均一性はありません。あまりに多様で、あまりに個性的なファクターが、まるで点描のように集まって、結果として一つの絵画(イメージ)が出来上がっている感じがします。
そんな、ある意味実体のないアメリカを象徴するイコンが大統領です。大統領はアメリカを言語化します。
これは日本の天皇とは正反対のあり方だと思います。島国ということもあって実体性や均質性が比較的高い日本を、言語を超えたモノで象徴するのが天皇。
どちらが正しいとか優位だとかは別として、少なくとも私たち日本人は日本的な仕組みの中で統合されているわけですから、表層がアメリカナイズされても、その深層は変りようがないことは確かだと思います。
そういう意味で、池上さんが冒頭で言うように、私もまた「アメリカが嫌いです。私はアメリカが大好きです」という矛盾の中にいつもいる感じがしています。
そして、「日本にとってそれほどアメリカは影響力があるのか」という疑問にも常につきまとわれています。
「全てアメリカの言いなり」と言うけれども、本当にそうなのか。「GHQによって骨抜きにされた」と言うけれども、本当にそうなのか。
このように、私たちにとってアメリカはアンビバレントな存在感を持った国であり、好き嫌いを超えて、どこか依存し続けている存在でもあります。
それはまるで、子どもの親に対する気持ちに近いのかもしれません。現代日本は良きにつけ悪しきにつけ、アメリカによって生み育てられたという事実が、その表面を覆っているのでしょう。
しかし、先ほど書いたように深層部はまた違うはずです。
敗戦(というレッテル)によって、私たちは現代の「国譲り」をしました。私の考える「国譲り」とは、簡単に言うと、「負けて勝つ」、「無意識化の中に本質を純化して残す」という手法のことです。
ここへ来て、現代日本の深層に残された日本的なるモノが活性化しつつあると感じます。
アメリカ(オバマ)はそこを敏感に察知しているのではないでしょうか。
もちろん、日本のみならず、アメリカ・コーティングされた世界中の国々の深層部が活性化しているのかもしれません。
それはすなわち表層部の弱体化、あるいは劣化ということかもしれません。
いずれにせよ、コーティングはあくまでコーティング。しかし、それが剥がれそうになれば、当然、その部分的な補修に取り掛かるでしょう。
オバマの変化はその現れであると感じます。アメリカから目を離せませんね。
Amazon そうだったのか!アメリカ
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