もう一つの富士山(その6)三島由紀夫と富士山
今日は「憂国忌」。
三島由紀夫の命日。昭和45年11月25日、三島は市ヶ谷駐屯地にて割腹自決しました。
今日はそんな三島の晩年と富士山との関係を深読みしてみましょう。
久しぶりの「もう一つの富士山」シリーズですね。
まずはこれまでの「もう一つの富士山」シリーズを復習してみましょう(自分でも何を書いたのか忘れているので)。
その1昭和13年「防共盟邦親善富士登山」
その2昭和17年の吉田口登山者は20万人
その3超大型戦略爆撃機『富嶽』
その4渡邊はま子『愛国の花』
その5丹下健三『大東亜建設忠霊神域計画』
なるほど、「もう一つの富士山」とは、「国体の象徴」ということですね。それは違う言い方をすれば、「防共の象徴」でもありました。つまり、共産主義から国体を守るための砦。
もちろん、当時の日本の国体の敵は共産主義だけではありませんでした。米英の帝国主義、植民地主義、あるいは国際資本主義も大いなる敵でした。
では、戦後の富士山はどうなったのか。
一般には、富士山は「日本の象徴」ではありましたが、「国体の象徴」ではなくなってしまいました。戦後天皇が象徴するモノが変わったように。
戦後世界はすぐに米ソ冷戦時代に突入します。アメリカの子分になった日本は、言うまでもなく新しい意味での「防共の砦」となっていきました。
これは、ここのところ何度も書いている「国譲り」の本質が現れています。表面上(意識上)、相手に譲っているように見せかけ、実は無意識の領域でその本流の濃度を高めていくという、日本的な文化継承のあり方です。
つまり、一般国民の意識とは裏腹に、潜在的に富士山は「国体の象徴」度を高めていたとも言えるのです。
それを敏感に察知し、意識的に表現し続けたのが三島由紀夫であった、というのが私の考えです。
決して私は三島をよく読んでいる者ではないので、あまり偉そうなことは言えません。しかし、それをなんとなく確かなものだと思うようになったのは、実は安倍総理の発言がきっかけでした。
今年6月11日、安倍総理は王貞治さんと富士山についての対談をしています(こちらで読めます)。
その中で総理は次のような発言をしています。
富士吉田の北口本宮冨士浅間神社に木花開耶姫(このはなさくやひめ)が祭ってあります。三島由紀夫の「豊饒の海」(著者晩年の長編シリーズ)の「暁の寺」(第3巻)に、そこに行く場面がありましてね。三島が、都良香(みやこのよしか)が書いた「富士山の記」(漢詩文集「本朝文粋」の中の一編)を引用してですね、その中に白衣を着た美女が富士山の頂で、舞を舞っている幻想を見たということが書いてある。
裾野では穏やかな風が、だんだん頂上に行くと、突風になっていく。それが雪煙を舞い上げて美女が2人ともに踊っているという姿、つまりそういうさまざまな幻想に変わっていくと。端正の極限であり、同時に、あやふやな情念と、正にそれがともに存在するというふうに書いていたのを今、ふと思い出したんですが、そんな山なのかなと思います。
「豊穣の海」は三島最晩年の作品。遺作と言ってもいい。安倍総理が挙げた部分はこちらで一部読むことができます。
三島の主張は非常に簡単に(乱暴に)まとめれば、憲法改正、国防軍設立ということになります。そういう意味で、安倍総理が三島にシンパシーを感じるのは当然と言えば当然。
当時の三島が最も恐れていたのは、まさに共産主義の襲来であって、それこそが見えざる国体の危機そのものでした。
その危機感が最高潮に達した時、彼は富士吉田の冨士浅間神社に取材をし、富士を照覧称揚し、そして作品化した。この意味は非常に大きいと、私は思っています。
私、実はまだ三島にちゃんと対峙していません。なんとなく微妙な違和感があるのも事実です。
しかし、富士山について考える時、どうしても避けて通れない存在であることもよく分かっています。
そろそろ勇気を出して踏み込む時が来ているのかもしれませんね。
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