『つくることば いきることば』 永井一正 (六耀社)
日本を代表する、いや世界を代表するグラフィック・デザイナー永井一正さんの珠玉の銅版画と言葉たち。
シンプルであり複雑であるというこの世界がそのままこの本に封入されている…だからこそ、心打たれました。ぐんぐん響いてくる。
あえてこの銅版画や言葉も「デザイン」だと言いたいと思います。
私たちは世界の全てを意匠化して認識しています。言語であれ、絵画であれ、音楽であれ、全てそうです。その技法が違うだけ。
そういう意味の上で、私は究極的に「デザイン」に興味があります。というのは…では、その意匠化の主体たる私たちをデザインしたのは誰なのか、つまり、人間や動物や植物や、あるいは富士山をデザインしたのは誰で、どんな意図をもってそういう形にしたのか、そこに最終的な興味があるのです。
もしかすると、永井さんの視線が抽象から動物や植物に向いたのは、そういう意味があるのかもしれない…この本を眺めながら、そんなことを思いました。
まったく不思議なもので、実は、私にとっては憧れ以上の存在であった永井一正さんが、私たち夫婦のためにサインまでしてこの本をくださったのです。
ご縁というのはあっという間に自分を取り囲む環境のデザインを変えるものです。たった一滴の雨水であっても、その落ちた場所が大河であれば、一瞬にして自分も大河の一部になる。
畏れ多いことでありますが、こんなご縁を作ってくださったのは、これまたご縁でつながった絵本作家の仁科幸子さん。永井一正さんの仕事仲間であり、この本の企画者でもある方です。本当に感謝です。
そんな不思議なご縁をとりもってくれたのは、「芸術は宗教の母」と言った出口王仁三郎の耀わん「十和田」です。おそらくはあの十和田のデザインは、地球そのものなのでしょう。あるいは宇宙。まさに神の造形。
王仁三郎の「物語」は、まさに「モノをカタる」、すなわちモノのコト化です。私の中では、未分化な「モノ」をデザインして「コト(カタ)」にはめていくことが、そのまま「デザイン」だと思っています。
驚いたのは、この永井さんの本の中に、たくさんの「モノ」への憧憬が表現されていることでした。特にこれだ!と思ったのは、
わたしが変なあり得ない動物を描いたりするのは、
動物というこれだけはっきりとした種の中にも、
境界線のない割りきれないものがあるからで、
目に見えない未分化の部分を描けなければ、
真理は見えてこないように思う。
という言葉でした。ここにこそ、「デザイン」の本質、私の言う「モノを窮めてコトに至る」の本質、そして、世界の人生の本質が表現されています。
そのほかにも、禅に通ずるページ、また、時間は未来から過去へと流れているという私の仮説を証明してくれるようなページも多々ありました。
もちろん、私だけでなく多くの人たちの心に、そして生命に響く銅版画や言葉が満載です。
きっと、こんなにこの本に力があるのは、永井さんの空洞のような「飢餓感」が満ちているからだと思います。空洞のような飢餓感という言葉は一見暗くマイナス方向に響きそうですが、決してそうではありません。
私はこの本を読み終え、そして眺め終えて、ああ、永井さんの飢餓感とは「人のためになりたい」という欲求そのものなんだなと感じました。
もしかすると来春、永井さんにお会いできるかもしれません。もし、神様のデザインがそうなっているとしたなら。
追伸 ちょうど仁科幸子さんがブログで耀わんとワタクシのことを紹介してくださりました!
Amazon つくることば いきることば
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