藤巻亮太 『オオカミ青年』
1年前発売のアルバムをなぜ今なのか。
それは今日という日を待っていたからです。
昨年、何人かの知り合いの方から、「藤巻くんのソロアルバムのレビューをしてくれ」とオファーを受けていましたが、そのたびに「時機が来たら」と答えてきました。
その時は、自分でもそれがなんの時機なのか、さっぱり分かっていませんでしたが、とにかく「もっとあとにその日が来るな」という勘が働いていたのです。
実際、今日のこの機会がやってくるというのを知ったのは、つい2週間ほど前のこと。そして、皆さんはきっと私がアレンジしたことだとお思いになることでしょうけれども、実は私は今回の舞台の準備には全く関わっていません。
だからこそ面白いですし、本当にご縁を感じますね。
いろいろとお約束があるために、細かいことは書けませんが、とにかく素晴らしいパフォーマンスでした。今までの流れからあえて言いますが、今日は正直「うまい!」と思いました(笑)。いや、本当に心に響く歌。言葉。たたずまい。
ちょうど昨年の今頃、あのNHKのドキュメンタリーを観て、こんな記事を書きました。今日、実際に藤巻くんとお話してみて、あそこに書いたことが、それほど大きく間違っていないのではないかという、まあこれも私の勘ではありますが、そう思いました。
そして、予想通り、あるいは予想以上に彼は進化、深化しているなと。それは音楽だけでなく、生徒たちに向けた多くの言葉たちにも感じることでした。
私自身としては、藤巻くんが今から登る舞台が、あのフジファブリックの志村正彦くんが夢に見た場所であり、そして実際にその夢を実現して涙しながら歌った場所であるということを、改めてお伝えすることができたことに一つのお役目を果たしたような気がしました。
「ここだったんだ…心に刻んで歌いたいと思います」…彼はその言葉どおり(少なくとも私の知るかぎり)最高のパフォーマンスを披露してくれました。きっと志村くんも喜び、そして感心してくれたことと思います。本当に二人には感謝したい。
そんな思いを抱きながら、あらためて聴く彼のソロアルバム「オオカミ青年」は、その言葉や音粒一つ一つに意味があるように聞こえます。
それは彼の葛藤がより高次元に結晶した姿であり、そういう意味では、私たち聞く側にもそれなりの体験や思索を要求するものなのでしょう。正直、私は今日までレビューをする資格がなかったのかもしれません。それを私自身、勘づいていたのでしょうね。
今日はリハも拝見し、本番では演奏されなかったものも含めて、懐かしい曲たちが新しく生まれ変わっていく瞬間を目の当たりにしました。
そこに見え隠れする、藤巻くんのアーティストとしての生き様…それは予想通りある種の宗教性を帯びていると感じましたが…には、圧倒されるとともに、どこか微笑ましいところもあり、いろいろな意味で心動かされました。
とにかく、自らの殻を破るために、自分や世界を違った視点から見直してみたい方には、このアルバムをじっくり聴き込むことをおススメします。
あえて、「今の自分」で勝負してくれた藤巻くん。その勇気と信念に感謝です。ありがとうございました。生徒たちの人生にもきっと一つの景色として今日の素晴らしい体験が生き続けることでしょう。
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