『アリエッタ』 実相寺昭雄監督作品
今月から始まったNHKBSプレミアムの「怪奇大作戦 ミステリー・ファイル」が実に面白い。
私の原体験の一つであるオリジナル1968、9年の「怪奇大作戦」、そして2007年のセカンドファイルも再放送されています。
その独特の「怖さ」は、当然のことそうそうたる脚本家メンバーによる暗く深いストーリーにも依拠していますが、やはり監督さんたちの技量による部分も大きい。
特にオリジナルの名作「京都買います」や、実質上の遺作となったセカンドファイルの「昭和幻燈小路」における実相寺昭雄の「変わらぬ」独特の映像&音響世界は、私にとってはある種のトラウマとなっています。
実相寺の作品の特徴は、人類の罪を感じさせる後味の悪い脚本、傾き歪んだ映像、突如挿入されるフラッシュバック的異世界(宗教的なものが多い)、繰り返される象徴的音などと言うこともできるでしょうけれども、そうした分析的な要因よりも、総体的に現代人の心の奥底にある「モノ」を喚起していることに本質があると思います。
さて、そんな表現者(東京藝術大学名誉教授まで務めた)実相寺昭雄が手がけたAV(アダルトビデオ)があることをご存知でしょうか。「ラ・ヴァルス」「アリエッタ」…。
実相寺は一時期、過激な女優加賀恵子と組んで、「エロス」をテーマに人間の欲望と現代、そして宗教性(罪と聖)を描くことに力を注いでいました。
私はある時期、実相寺の作品のコレクターでしたから、当然それらも手許に所持しておりました。AVというメディアであり、その正統的な意味においてもそれなりな内容でありながら、鑑賞している内に涙が止まらなくなり、すっかり心も体も萎えてしまうという問題作。そう、実に深い問題提起作でありました。
特に「アリエッタ」の完成度は高い。その「アリエッタ」、誰かに貸して返ってこなくなってしまいました。ですから、もう15年くらい観てません。
私、この「アリエッタ」で気になっていたことがあるんです。ずいぶん前にブログのどこかにも書いた気がしますが、作品の最後に流れる音楽が頭を離れないのです。
実相寺は作品の最後にクラシックのピアノ曲を使うことが多かった。哀しい物語の最後にわざと(?)長調の曲を持ってきたり、実にうまかった。
この「アリエッタ」では、いかにもフランスバロックな曲がピアノで演奏されています。私、この曲が誰の何という曲なのか分からないのです。
ラモーやクープランやダングルベールのような響きですが、有名なクラヴサン曲(Menuet en Rondeau)なのでしょうか。それとも、それに擬したオリジナル曲なのでしょうか。どなたか教えてください。
というのも、今年になって、その最後のシーンがYouTubeにアップされたのです!素晴らしい。
全く変なシーンはありませんから(ある意味変なシーンですが…笑)、安心して(?)ぜひ実相寺ワールドを垣間見てください。
田口トモロヲ演じる公務員に加賀恵子演じる主人公が殺されるところです。死への恍惚…哀しいんですよ、これが。そして、流れる音楽。
う〜ん、誰かビデオ返してくれ!
Amazon 実相寺昭雄コレクション[エロス]
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